高級住宅街「芦屋」でも別格の存在
日本にあまたある高級住宅街のなかでも、確実にトップクラスに入るのが、兵庫県芦屋市の東北部に位置する、六麓荘町です。大阪と神戸のちょうど中間、六甲の山麓、38ヘクタールの高台に広がる瀟洒な住宅街です。
芦屋市といえば、関西の高級住宅地として全国的に有名ですが、そのなかでも六麓荘町は別格と言われています。そもそも芦屋市は「国際文化住宅都市」を掲げ、景観保全に熱心な街と知られています。2016年には屋上広告を禁止する条例が施行され話題になりました。そんな芦屋市のなかでも、六麓荘町は遠く観光客が訪れるほど、美しい街並みでも名を馳せています。
六麓荘町の開発は、1928年。「六甲の麓の自然豊かな地に『東洋一の別荘地』をつくろう」と内藤為二をはじめとする関西の経済人が出資し、街を開発・管理する「株式会社六麓荘」を設立したことに始まります。国有林の払い下げを受け、同じように山の斜面地に立地する、香港島の白人専用地区をモデルに開発がスタートしました。
自然の地形を生かした曲線的な道路は幅6メートル以上で、1区画につき300~400坪以上を標準としたゆったりとした街並み。景観を損なう電柱は、多額の費用をかけて日本で初めて地中化。街路灯や特注のマンホールなどには、六の漢字を円周に六個並べて真ん中に荘の漢字を配した街のロゴマークが刻まれています。そこには先人のこだわりや想いが感じられます。
町内に信号や自動販売機はなく、どこの街にもあるコンビニやスーパーマーケットもありません。この美しい街並みを守っているのが「六麓荘町 町内会」。町内に新しく住宅を建てたり、増改築したりする際の基準を「六麓荘町建築協定」として設け、建築申請がこの協定に沿ったものか確認します。協定では、
● 1区画が400㎡以上の敷地
● 個人の住宅(別荘)として使う一戸建てのみ建築可能
● 建築物の高さは1階建または2階建
● 敷地の4割以上(地区により3割)は庭として緑地にする
● 緑地部分10㎡につき、高木1本と中木2本を植える
などと記され、建築前には近隣説明会も行われます。