いつの時代もなくならない相続トラブル。「生前しっかり話し合ったから大丈夫」…ではないのです。大切な人の死後、まさかの事態が起きてしまったら? 相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏が実際の事例をもとに解説します。今回は、生前における遺留分の放棄について。 ※本連載は遺言相続.com掲載の事例を編集したものです。プライバシーに配慮し、相談内容と変えている部分があります。

長男と母の秘密が判明。さらに話を聞いていると…

B子さんと父は言葉を失い、唖然としています。罪の意識に耐えられなくなったのか、母は怒涛の勢いで話し始めました。

 

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「タカちゃんがね、タカちゃんがね、初めて夢を語ってくれたの。小さいころからあの子は一生懸命な子だったけど、将来の夢とか話してくれたことなかったじゃない。それに学生時代は引きこもりがちだったし…。なのに、授業?に参加した日から顔つきが変わったの。『俺は金持ちになるんだ』『バイトなんか辞めて、いっぱい稼いで、母さんと父さんを海外旅行に連れてってやる』って…。お母さん、それ聞いて泣いちゃった。それで…」

 

「だからって300万円あげたの⁉ 私たちに黙って⁉」

 

「ごめんなさい…」

 

「というか、『授業』って何よ」

 

話を詳しく聞くと、長男が「授業」と称した情報商材を売るための集会に参加していたこと、「授業料」「ブログ開設費用」など何かと理由をつけては母に無心していたこと、そして母は疑いもせずお金をあげていたこと…様々な事実が判明しました。

 

しかし会話を重ねたところで、もう後の祭り。怒ろうが喚こうが長男にあげたお金は戻ってきません。貯めに貯めた通帳は空っぽ同然の状態でした。

 

「今日はもうやめよう。疲れた」

 

父の静かな一言で尋問は終わりました。

 

ちなみに当然の結果といえますが、長男の壮大な計画は失敗。なんの利益も上げられないまま「授業料」が払えなくなり、最初で最後の夢は終わりました。父の死後、長男は実家に戻り、母と2人暮らしをしています。

 

家族間のお金の問題をめぐり疲れ切ったB子さんは言います。

 

「もう良いんです。私は幸いお金には困っていません。お金をあげたことも、私に黙っていたことも許していませんが、とはいえ家族だから、不憫に思う気持ちがないわけでもない。母の遺産は要りません。兄にすべてあげます。50歳超えてもフリーターですしね、兄。『どうか無事に生きてください。ではさようなら』という気持ちなんです」

 

【総評】

 

相続人には「遺留分」があります。この遺留分を放棄できることを知らない方も多い(もしくは実務でどのようにされているか)のではないでしょうか。

 

※ 遺留分・・・相続人が最低限の遺産を確保するために設けられている制度で、兄弟姉妹以外の相続人には相続財産の一定割合を取得できる権利があります

次ページ専門家の解説:遺留分の放棄にかかるコスト。実は…

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2020年8月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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