いつの時代もなくならない相続トラブル。「生前しっかり話し合ったから大丈夫」…ではないのです。大切な人の死後、まさかの事態が起きてしまったら? 相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏が実際の事例をもとに解説します。今回は、生前における遺留分の放棄について。 ※本連載は遺言相続.com掲載の事例を編集したものです。プライバシーに配慮し、相談内容と変えている部分があります。

専門家の解説:遺留分の放棄にかかるコスト。実は…

今回のケースですと、母が亡くなった際B子さんには「法定相続分は2分の1、遺留分は4分の1」を請求する権利が与えられています。しかしB子さんは「法定相続分はおろか遺留分さえ、いりません」と固い決意を示されました。そこで私はB子さんの母に遺言の作成、B子さんには遺留分の放棄を提案しました。

 

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具体的には、母が遺言を作成するのと同時に、B子さんに家庭裁判所へ「生前の遺留分放棄の申立」をしてもらったのです。

 

3月に申立書類を郵送し、約1ヵ月後、家庭裁判所から「照会書」という書面が長女に届きました。

 

そのなかには「遺留分放棄の意思確認」「今までどのような財産を親からもらったか」などの質問が10個程度書いてあったため、「生前贈与を受けたことがある」といった回答を記入して郵送しました。

 

さらに1ヵ月後の5月、家庭裁判所における審判の結果が郵送でB子さんのもとに到着しました。無事に、生前に遺留分放棄をすることが認められたのです。

 

申立から要した期間はおよそ2ヵ月。郵送のやりとりのみです。遺留分放棄の手続き自体は難しいものではありません。これにより、母が亡くなったときにB子さんには遺留分が発生しなくなりました。

 

母の遺言でもB子さんには相続させない旨を明言していますので二重の対策となっています。「母のすべての財産が長男に引き継がれる」という道筋がはっきり作られたのです。

 

「遺留分放棄なんて本当に家庭裁判所に認められるの?」という質問をよく受けます。しかし、遺留分放棄の申立自体は、ある程度の財産をすでにもらってさえいれば認められることが多いものです。

 

申立自体の費用も、プロに頼んでも数万円で済みますので非常に安価です。よって、兄弟姉妹間で相続でモメることが想定されるのであれば、事前に「遺言書作成+遺留分放棄」はセットで検討しておいたほうがよいでしょう。

 

なお、当然のことながら遺留分という権利を相続人自らが進んで放棄することが必須ですので、放棄を望まない人にはこの手続きができません。十分注意してください。

 

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江幡 吉昭

株式会社アレース・ファミリーオフィス代表取締役

一般社団法人 相続終活専門協会代表理事

 

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2020年8月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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