介護職員の手助けを拒否し続ける女性入居者
日に日にRさんの状態は悪化の一途をたどります。そのうち、見るからにズボンが濡れているのがわかるようになりました。しかし、介護職員からの手助けを拒否し続けます。それでも、昔の介護職員は職人気質の強い者も多く、手を替え品を替え、介助に挑みます。努力の甲斐あって、奇跡的に介助を許され、着替えまでお世話ができる者も出現するのです。
次は、Rさんには、今使用している布パンツから紙製のリハビリパンツに変更してもらうという難題が待っています。尿意がなく、常時失禁してしまうRさん、おまけに職員からの介護支援は原則NGでは、リハビリパンツを使用してもらうことがベターであるということが職員会議での決議事項です。攻防が続いているある日、Rさんが夜中に居室で転び、骨折をしてしまいました。夜間、救急車にて病院に搬送され、翌日は本人の要望もあり、手術を行ないました。
1カ月後、車椅子になって退院をしてきたRさん。医師の話によると、今までのように自由に歩くことはできないだろうと言います。さらに、1カ月間の入院生活で、認知症状が発症し、今までの矍鑠としたプライドの高いRさんとは、まるで別人のようになっています。
拒否をし続けてきた職員による介護を、素直に受けるようになりました。8月のある日のこと、急に活動家のような顔つきに戻って職員を困らせる事件を起こします。なんでも、広島県で開催される原水爆禁止のイベントに参加すると言い出したのです。真夏の中、何キロも行進をするイベントのようで、自分もその行進に車椅子でも参加したい、と言います。当然、主治医からの返事は自殺行為、承服することができない、というものでした。結局、教え子らが必死に説得し、最後はRさんが折れたようでした。居室からは「先生には、もっと長生きをして指導をしてほしい」と教え子らの悲壮感ある涙声が漏れてきます。
結局、彼女はその年の暮れに密かに亡くなりました。居室の中で、多くの愛読書や資料の中に埋もれて亡くなっていたのを介護職員が発見しました。手元には、さっきまで読んでいたのであろうレーニンの本の76ページが開いてあったそうです。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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