中国「安楽死」の知られざる実態…日本と一線画す問題があった

筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した女性に致死量の鎮静剤を投与し、死に至らせたとして医師2名が逮捕された「ALS嘱託殺人事件」。人の安楽死とはなにか、改めて問われる事件となった。医療ガバナンス研究所の医療通訳士・趙天辰氏は、「自国の安楽死」について、日本と照らし合わせながら述べている。 ※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

「ALS嘱託殺人事件」から思う「中国の安楽死」

■中国の安楽死について

 

筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した女性から依頼され、2019年11月に致死量の鎮静剤を投与し、死に至らせたとして、7月23日、嘱託殺人容疑により医師2名が逮捕された事件が大々的に報じられた。

 

この一件にて、「安楽死」ではなく、「嘱託殺人」として報道されるように、日本では「安楽死」に関する法制度は十分に整えられていない。世界レベルで見ても、安楽死に関して法律で認められている国はかなり少ない。

 

日本と同様、中国もまた、安楽死についての議論を深めるべき国の一つである。本記事では、中国における安楽死の現状について、歴史を踏まえて紹介していきたい。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

中国では、末期がん患者や、ALSを含む難病指定患者が回復を望めない状況に陥ったとき、または耐え難い病気の苦しみに直面しているとき、尊厳ある死を行いたいと、安楽死を求める人が数多く存在している。

 

ALSに関していえば、中国では約20万人もの患者がいるが、実際に安楽死を行ったと取り上げられた事例はほとんどない。しかし、中国人が実際に安楽死を求め、海外に渡航する事例も存在する。たとえば、2018年、著名キャスター傅達仁(フー・ダ・ジェン)は安楽死を求め、日本円換算で1000万円以上かけてスイスに渡航して彼の生涯を終えることができた。このような海外に赴いて安楽死を実施した事例は傅達仁以外はほとんど見当たらないため、中国人の安楽死に対する社会意識は高くないと予想される。

 

中国では、積極的安楽死は意図的な殺人罪として処罰される。もちろん、状況によっては刑罰が軽くなる場合もある。しかし、消極的安楽死の定義は日本よりも寛容である。

 

たとえば、生命維持装置を取り外す行為も中国では「消極的安楽死」に入り、中国では罰せられないことがほとんどである。そのため、ALS患者に対する安楽死の事例はほとんど取り上げられていないが、このような「消極的安楽死」を実施している人も多く存在すると思われる。

 

しかし、中国では、安楽死に対し正式に制度化されていない。

 

1988年7月5日、中国医学協会、中国自然言語学会、中国社会科学院哲学研究所、中国法学会、上海医科大学などの関連機関が共同で「安楽死」に関する学術セミナーを開催した。会議の代表は、安楽死、特に消極的安楽死は中国では常に行われているという見解を示した。一方、積極的安楽死は中国で少なくとも7件の事例が発表されているが、実際にはこの数をはるかに超えているといわれている。

 

一般的に、安楽死による法的裁判は発生していないが、中国の状況を考慮すると、安楽死に関する立法条件は整っていないと見解を示した。

医療ガバナンス研究所 医療通訳士

東京外国語大学卒。日本語、中国語、英語、ウルドゥー語、スペイン語を話せる。医療通訳士として活動している。また、国際的な医療問題に取り組み、医療分野の国境をなくしたいと考えている。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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