家族の願いは両親が一緒に過ごすこと
しかし、退官し、現役生活が終わってすぐに、認知症になってしまい、あれよあれよという間に、認知症が悪化、今までの振る舞いが嘘のようにまるで幼児のようになってしまいました。そして、奥さまに強く依存するようになってしまったのです。次のように整理しています。
かつては、やり手のエリート官僚として、仕事にも収入にも恵まれ、おまけに女性にも恵まれ、好き勝手にやってきましたが、やはり、母のことを思う気持ちは嘘ではなかったのではないだろうか。だとすると、今は当然そのような女性は存在せず、母と一緒にいたいと願っているはずです。たとえ、母親から虐待を受けていたとしても、それでも一緒にいたいはずなのではないだろうか。どうか今まで通りの生活でお願いしたい。
もちろん、この事実は家族である自分たちは承知していることなので、万に一つの、事故や事件が起きた時は、そのすべての責任は、自分たち家族にあると考えています。ホーム側には一切迷惑をかけるつもりはありません。どうか、家族の願いを聞いて欲しい。……そう話したのでした。
結局、当面の間は「今まで通り」ということで決着をしましたが、看護師からの強い要請で、昼間帯はなるべく居室で二人だけにしないこと、必要があれば、一時的に二人を分離して介護を行なうことを家族に承知してもらうことを条件に二人での生活を継続しました。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役