さらに明治時代から昭和時代初期にかけて、番町は多くの文化人に選ばれる街に。武者小路実篤は一番町生まれで、結婚後もしばらくは一番町の邸宅で暮らし、与謝野鉄幹・晶子夫婦は四番町付近に、初代中村吉右衛門や初代市川猿翁などの歌舞伎役者は六番町付近に暮らしていたといいます。
ほかにも泉鏡花、島崎藤村、永井荷風、国木田独歩、菊池寛、吉行淳之介、山田耕筰、滝廉太郎……名前を挙げだしたらきりがないほどです。現在「四ッ谷」駅前の新宿通りと「半蔵門」駅近くの大妻通りを結ぶ約1キロの道のりは「番町文人通り」と呼ばれ、14人の文化人の旧居跡に案内プレートが設置され、観光ルートとして人気を集めています。
都心の高級住宅地「番町」…どんな人が住んでいる?
都内でも屈指の高級住宅地であり、歴史的な名所旧跡も数多く点在。さらに皇居のお濠にも近い番町。最近は都心の利便性に注目が集まり、邸宅街のイメージは影を潜め、高級レジデンスが次々と誕生する、都内でも億ションが数多く並ぶ街へと変貌を遂げています。そんな番町には、どのような人が住んでいるのでしょうか。国勢調査(2015年)などの結果から、その傾向を紐解いてみましょう。
千代田区番町に住んでいるのは一番町から六番町まで合わせて13,541 人で、人口密度は15,564人/km2。年齢構成をみていくと、15歳未満が16.1%、15~64歳が65.2%、65歳以上が18.7%と、ファミリー層の割合が多いことがわかります。
また世帯数は6,437世帯で、そのうち単身世帯は2,750世帯、単身者率は42.75%。さらに18歳未満の子どもがいる家庭は3,569世帯で、5割以上が子育て世帯です。教育機関が充実している番町は、千代田区のなかでは子育てのしやすい街としても知られていて、それを裏付ける結果といえるでしょう。
また「一戸建て」が135世帯でわずか2%。残りは「共同住宅」に住んでいます。そのうち分譲が54%、賃貸が46%。若干、持ち家派が優勢のエリアになっています。