「苦悩する人」を支えるのがつらい…どこまで深く関わるべきか

景気低迷、コロナ禍、少子高齢化・多死社会の到来…。悩み多き現代、心を健やかに保つには、周囲の人たちとの絆だけでなく「お互いを支える技術」が大切です。ここでは、医師として終末期医療、緩和ケアの第一線で活躍し、患者やその家族と深い信頼関係を築いてきた筆者が、相手に寄り添い信頼関係を深める対話術、「傾聴」を軸としたコミュニケーションスキルを紹介します。※本記事は、『傾聴力 相手の心をひらき、信頼を深める』(大和書房)から一部抜粋・再編集したものです。

援助する人も、できるだけ周囲に支援を求めて

傾聴には人を支えるすごい力がある一方で、誰かの話を真剣に傾聴するということは、それだけ多くの精神力も使いますし、当然体力も消費します。傾聴を仕事の内としている私も、全力で傾聴できる人数は一日では十人未満といったところでしょう。ましてや特別な訓練を受けていない方にとって、一人でも深く傾聴した後、どっと心身の疲労が押し寄せてくるのを感じるかもしれません(傾聴が終わった後は背伸びをして、深呼吸をし、リラックスをしてください)。

 

傾聴は、一体どこまでやるべきなのでしょうか。ここでは、「撤退」のポイントについて詳しくお伝えしていきましょう。この内容も、困っている方と接する人すべてに役立つと思います。

 

ピクスタ
(※PIXTA)


①自分で頑張り過ぎない

 

この記事を読んでくださっているような皆さんは、人を支えたいという気持ちがとりわけ強い素晴らしい方だと思います。ですから、むしろ気持ちが強く、頑張り過ぎてしまうかもしれません。

 

けれども一人の力には限界があります。私たち専門家も、弱っている方を支える時は、できるだけ必要なスタッフを集めて皆で支えるようにしています。一人の苦悩者を支えるというのはそれだけ大変だから、ということもありますし、三人寄れば文殊の知恵、で複数の人が関わることで様々な視点を通してその方が持っている問題が明らかになり、多様な解決策が見えてくるからでもあります。

 

ゆえに、できるだけ周囲に支援を求めましょう。また自分を支えてくれる人(第三者)を想定しておいて、できれば事前にその方に「これから○○さんのことを支えたいと思っているので、私のことをお願いします」とお伝えしておくのが良いでしょう。

 

自分のことは意外にしっかり見えているようで見えていないことがあります。苦悩者を支える自分を冷静に見てくれる人の存在を確保することは重要でしょう。そうすればのめり込み過ぎて、あるいは入り込み過ぎて、苦悩者と一体化することを避けられるでしょうし、撤退のポイントも見定めやすくなると思います。

早期緩和ケア外来専業クリニック院長
緩和医療専門医 

茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。日本緩和医療学会緩和医療専門医、日本老年医学会専門医、総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、がん治療認定医。2006年度笹川医学医療研究財団(現・笹川記念保健協力財団)ホスピス緩和ケアドクター養成コース修了。

内科専門研修後、ホスピス・在宅・ホームなど、様々な医療機関で老年医療、緩和ケア及び終末期医療を実践。

東邦大学大森病院緩和ケアセンター長を経て、早期緩和ケアの普及・実践のため、2018年8月に遠隔診療導入した早期緩和ケア(診療時やがん治療中からの緩和ケア及びがんに限らない緩和ケア)外来専業クリニックをさきがけとして設立。

著書に、『死ぬときに後悔すること25』(新潮文庫)、『老年医療の専門医が教える 誰よりも早く準備する健康長生き法』(サンマーク出版)などがある。

著者紹介

連載第一線の緩和ケア医がレクチャー!相手の心を開き、信頼を深める「傾聴力」の磨き方

傾聴力 相手の心をひらき、信頼を深める

傾聴力 相手の心をひらき、信頼を深める

大津 秀一

大和書房

相手が元気になる「聴き方」。医療・介護現場のプロが必ず実践している、本当の「聴く力」とは? ●大切な人の悩み相談に真剣にこたえている ●自分なりに一生懸命アドバイスもしている なのに、相手が元気にならない……

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