援助する人も、できるだけ周囲に支援を求めて
傾聴には人を支えるすごい力がある一方で、誰かの話を真剣に傾聴するということは、それだけ多くの精神力も使いますし、当然体力も消費します。傾聴を仕事の内としている私も、全力で傾聴できる人数は一日では十人未満といったところでしょう。ましてや特別な訓練を受けていない方にとって、一人でも深く傾聴した後、どっと心身の疲労が押し寄せてくるのを感じるかもしれません(傾聴が終わった後は背伸びをして、深呼吸をし、リラックスをしてください)。
傾聴は、一体どこまでやるべきなのでしょうか。ここでは、「撤退」のポイントについて詳しくお伝えしていきましょう。この内容も、困っている方と接する人すべてに役立つと思います。
①自分で頑張り過ぎない
この記事を読んでくださっているような皆さんは、人を支えたいという気持ちがとりわけ強い素晴らしい方だと思います。ですから、むしろ気持ちが強く、頑張り過ぎてしまうかもしれません。
けれども一人の力には限界があります。私たち専門家も、弱っている方を支える時は、できるだけ必要なスタッフを集めて皆で支えるようにしています。一人の苦悩者を支えるというのはそれだけ大変だから、ということもありますし、三人寄れば文殊の知恵、で複数の人が関わることで様々な視点を通してその方が持っている問題が明らかになり、多様な解決策が見えてくるからでもあります。
ゆえに、できるだけ周囲に支援を求めましょう。また自分を支えてくれる人(第三者)を想定しておいて、できれば事前にその方に「これから○○さんのことを支えたいと思っているので、私のことをお願いします」とお伝えしておくのが良いでしょう。
自分のことは意外にしっかり見えているようで見えていないことがあります。苦悩者を支える自分を冷静に見てくれる人の存在を確保することは重要でしょう。そうすればのめり込み過ぎて、あるいは入り込み過ぎて、苦悩者と一体化することを避けられるでしょうし、撤退のポイントも見定めやすくなると思います。