「開かれた質問」と「閉ざされた質問」を活用しよう
挨拶から始まり、天気や季節、今日の出来事などで始めると良いでしょう。
ただこのご質問は、いざ苦悩者が困っていることを見定める時にどう進めるか、ということだと思います。
一般に質問は「開かれた質問(open-ended question)」で始めるのが良いでしょう。「開かれた質問」とは、
「今一番気になってらっしゃることは何ですか?」
「一番困ってらっしゃることは何ですか?」
という質問のように、「はい」か「いいえ」で答えることができず、受け手の自由な応答を促す質問のことをいいます。
もちろん、困っていることが明白な場合や、以前に話を一度聞いている場合には「○○はどうなりましたか?」と一応はその問題に焦点をあてて聴くこともありますが、この場合もイエス・ノーで答えられない質問なので、これは「開かれた質問」になります。
一方で「閉じた質問(closed question)」という質問があります。これは、
「学校は楽しいですか?」
「最近忙しくて疲れるとかはありますか?」
のように、「はい」か「いいえ」で答えられる質問のことをいいます。これは特定の問題の情報を収集するために有効とされています。ゆえに、基本的に援助者は「開かれた質問」で開始して問題をすくいあげ、その後その一つ一つを「閉じた質問」で詳しく聴いてゆく、ということになります。
相手から話し始めてもらうのも一つの方法
何から話せば良いかわからない、という質問を受けることがあります。
「話してもらえば良い」というのが答えです。しかし中には、「そもそもあまり話してもらえない」という場合もあるでしょう。その場合に、もちろん雑談などをしっかりして、基本的な人間関係を築いておくことから始めることも重要です。
ただ、何らかの専門性を皆さんが持っていらっしゃるような場合は、それを基盤に関わるということも有効な方法です。例えばこの本の読者さんの中には何かの資格を持っている人もいることでしょう。その知識や経験などをもとに、援助してゆくという方法があります。あるいは実際にそれが求められている場合もあります。
例えば医療職で言えば、薬剤師には薬の知識が、看護師にはケアの知識が、それぞれありますから、「薬(あるいはケア)についてお困りのことはありませんか?」とたずねたり、何か困ったことが出て来たら「それにはこういうことができると思います」とお伝えすることで心を開いてくださることがあるわけです。
また自己開示を先に行うことで(時には自分の物語を話してみることで)、気持ちを預けようと思ってくださることもあるでしょう。
あと小ネタを最後にお伝えしておきます。
家族写真を見逃さず、話のきっかけにするのが良いと思います。例えば、私は患者さんのお部屋にご家族の写真や、お孫さんの描いた絵などがあればできるだけそのことに触れるようにしています。「物語」を知る格好のきっかけになるのは明白です。
写真に限らず、何か家族の影響を感じられるものがあれば話題にすると良いでしょう。また同様に、「故郷話」をするのは基本だと思っています。おかげさまで私も西と東を行ったり来たりしてきたので、全国未踏の県はありませんから、様々な地元ネタに対応できます。「故郷」は物語の始まりです。ぜひ聴いて、可能ならば少し盛り上がると良いでしょう。