緩和医療専門医が解説…「人から信頼される人」の会話作法

景気低迷、コロナ禍、少子高齢化・多死社会の到来…。悩み多き現代、心を健やかに保つには、周囲の人たちとの絆だけでなく「お互いを支える技術」が大切です。ここでは、医師として終末期医療、緩和ケアの第一線で活躍し、患者やその家族と深い信頼関係を築いてきた筆者が、相手に寄り添い信頼関係を深める対話術、「傾聴」を軸としたコミュニケーションスキルを紹介します。※本記事は、『傾聴力 相手の心をひらき、信頼を深める』(大和書房)から一部抜粋・再編集したものです。

「開かれた質問」と「閉ざされた質問」を活用しよう

<Q> 話の切り出し方を教えてください。

 

挨拶から始まり、天気や季節、今日の出来事などで始めると良いでしょう。

 

ただこのご質問は、いざ苦悩者が困っていることを見定める時にどう進めるか、ということだと思います。

 

一般に質問は「開かれた質問(open-ended question)」で始めるのが良いでしょう。「開かれた質問」とは、

 

「今一番気になってらっしゃることは何ですか?」

「一番困ってらっしゃることは何ですか?」

 

という質問のように、「はい」か「いいえ」で答えることができず、受け手の自由な応答を促す質問のことをいいます。

 

もちろん、困っていることが明白な場合や、以前に話を一度聞いている場合には「○○はどうなりましたか?」と一応はその問題に焦点をあてて聴くこともありますが、この場合もイエス・ノーで答えられない質問なので、これは「開かれた質問」になります。

 

一方で「閉じた質問(closed question)」という質問があります。これは、

 

「学校は楽しいですか?」

「最近忙しくて疲れるとかはありますか?」

 

のように、「はい」か「いいえ」で答えられる質問のことをいいます。これは特定の問題の情報を収集するために有効とされています。ゆえに、基本的に援助者は「開かれた質問」で開始して問題をすくいあげ、その後その一つ一つを「閉じた質問」で詳しく聴いてゆく、ということになります。

相手から話し始めてもらうのも一つの方法

<Q> 何から話せば良いかわかりません。

 

何から話せば良いかわからない、という質問を受けることがあります。

 

「話してもらえば良い」というのが答えです。しかし中には、「そもそもあまり話してもらえない」という場合もあるでしょう。その場合に、もちろん雑談などをしっかりして、基本的な人間関係を築いておくことから始めることも重要です。

 

ただ、何らかの専門性を皆さんが持っていらっしゃるような場合は、それを基盤に関わるということも有効な方法です。例えばこの本の読者さんの中には何かの資格を持っている人もいることでしょう。その知識や経験などをもとに、援助してゆくという方法があります。あるいは実際にそれが求められている場合もあります。

 

例えば医療職で言えば、薬剤師には薬の知識が、看護師にはケアの知識が、それぞれありますから、「薬(あるいはケア)についてお困りのことはありませんか?」とたずねたり、何か困ったことが出て来たら「それにはこういうことができると思います」とお伝えすることで心を開いてくださることがあるわけです。

 

また自己開示を先に行うことで(時には自分の物語を話してみることで)、気持ちを預けようと思ってくださることもあるでしょう。

 

あと小ネタを最後にお伝えしておきます。

 

家族写真を見逃さず、話のきっかけにするのが良いと思います。例えば、私は患者さんのお部屋にご家族の写真や、お孫さんの描いた絵などがあればできるだけそのことに触れるようにしています。「物語」を知る格好のきっかけになるのは明白です。

 

写真に限らず、何か家族の影響を感じられるものがあれば話題にすると良いでしょう。また同様に、「故郷話」をするのは基本だと思っています。おかげさまで私も西と東を行ったり来たりしてきたので、全国未踏の県はありませんから、様々な地元ネタに対応できます。「故郷」は物語の始まりです。ぜひ聴いて、可能ならば少し盛り上がると良いでしょう。

 

あああ
何から話していいかわからないなら、相手に話してもらえばいい

 

早期緩和ケア外来専業クリニック院長
緩和医療専門医 

茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。日本緩和医療学会緩和医療専門医、日本老年医学会専門医、総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、がん治療認定医。2006年度笹川医学医療研究財団(現・笹川記念保健協力財団)ホスピス緩和ケアドクター養成コース修了。

内科専門研修後、ホスピス・在宅・ホームなど、様々な医療機関で老年医療、緩和ケア及び終末期医療を実践。

東邦大学大森病院緩和ケアセンター長を経て、早期緩和ケアの普及・実践のため、2018年8月に遠隔診療導入した早期緩和ケア(診療時やがん治療中からの緩和ケア及びがんに限らない緩和ケア)外来専業クリニックをさきがけとして設立。

著書に、『死ぬときに後悔すること25』(新潮文庫)、『老年医療の専門医が教える 誰よりも早く準備する健康長生き法』(サンマーク出版)などがある。

著者紹介

連載第一線の緩和ケア医がレクチャー!相手の心を開き、信頼を深める「傾聴力」の磨き方

傾聴力 相手の心をひらき、信頼を深める

傾聴力 相手の心をひらき、信頼を深める

大津 秀一

大和書房

相手が元気になる「聴き方」。医療・介護現場のプロが必ず実践している、本当の「聴く力」とは? ●大切な人の悩み相談に真剣にこたえている ●自分なりに一生懸命アドバイスもしている なのに、相手が元気にならない……

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