建物は出来高相当額の70%で評価できる
相続対策として、賃貸アパート建築中に施主(被相続人)が亡くなった場合の相続対策効果は、どうなるのでしょうか?
この場合は、建物の出来高相当額の70%で建物を評価することになります。賃貸アパートは完成しておらず、当然、入居者もいないので、貸家の評価にはならず、土地も貸家建付地評価にはなりません。出来高に応じて出来高相当額を払っていた場合、出来高に対する支払いの30%相当分相続税評価額を下げることができます。
例えば、工事代金5000万円で出来高相当額が3000万円の場合、工事中の賃貸アパートの相続税評価額は、
3000万円×70%=2100万円
になります。出来高以上に支払いをしていると、その差額は、前渡金として相続税の課税財産にプラスすることになります。逆に、出来高までの支払いがされていない場合、未払金は相続債務となります。
借金の相続には相続放棄・限定承認で対策を
資産を相続するはずが、実は借金のほうが多かったということがあります。つまり、アパート・マンション経営がうまくいかず、多額の借金はあるが現金はほとんどない、修繕をしないといけない時期だがそれもできず空室がどんどん増えている、家賃も大幅に下落している、計算すると明らかに借金のほうが多い、といった状態で、相続する意味がないのです。
このような場合は、相続放棄、もしくは限定承認を知っていると、その後の人生が大きく変わります。相続放棄とは、財産も借金もすべて相続しないことで、3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立をすると、財産をもらうことはできませんが、借金も返す必要がなくなります。相続の放棄は、1人でもできます。
限定承認とは、被相続人の財産の範囲内で借金を相続することです。例えば、相続後に借金のほうが多いとわかっても、相続した財産の範囲内で借金を返せばいいのです。こちらも、相続開始から3か月以内に家庭裁判所に申立をしなければなりません。限定承認は、相続人全員で申し立てる必要があります。なお、3か月以内に申し立てないと、単純相続したものとみなされます。したがって、相続開始前に、資産・借金がどれくらいあるのかを把握し、事前に計画を立てておく必要があります。