「シャンプーは毎日すべき」世間が信じるヘアケアの嘘
巷には「薄毛を解消する」ためによいこと・悪いことといった情報が数多く流布していますが、中には「常識のウソ」のような間違ったものも少なくありません。例えば「シャンプーは必ず毎日しなければならない」というような、薄毛を解消するどころか、むしろ促進してしまう恐れのある迷信的な情報すらありますから、注意することが必要です。
以前の記事『「生えなかった…」被害女性続出、薄毛ビジネスのひどい実態』で、育毛シャンプー、発毛シャンプーと呼ばれる類のものについて、お話ししました。ここでは日常で頭髪を洗浄するための一般的なシャンプーについて考えていくことにします。「一般的なシャンプー」といっても、じつにさまざまな商品がありますが、これもメーカーが売上を伸ばすための戦略。髪にいいかどうかは度外視…という実態があります。
そもそも髪を洗うという行為の歴史は古く、海外では紀元前に神へのみそぎの儀式として始まったといわれます。一方、日本では古代には髪を水で洗うという習慣はなく、稲や麦の茎を粉末にして髪にまぶしたうえで、丁寧にくしでとかして髪の手入れをしていたようです。日本人が髪を水で洗うようになったのははるかあとで、江戸時代末期のこと。ふのりやうどん粉、うぐいすや鳩のフン、粘土、卵の白身、椿油のしぼりかすなどがシャンプー代わりに使われていたそうですが、実際に髪を洗うのは上流階級でも1ヵ月に1度ほどの頻度だったといいます。
明治時代に入り、石鹸を使うことが一般的になると、体も髪も同じ石鹸で洗うようになりました。「シャンプー」という言葉は昭和6年、髪も体も洗うための洗い粉の販売とともに初めて登場します。その後、さまざまなメーカーから洗い粉のシャンプーが発売されるようになり、昭和30年頃から、使いやすい液体シャンプーがお目見えしました。
昭和60年頃からは、夜と朝に1日に2回シャンプーをする“朝シャンブーム”によって、シャンプーの需要が急増します。さらに香りのよいシャンプーや、「フケ・かゆみ用」「ダメージヘア用」「パーマ・カラーリングヘア用」のシャンプーなど、用途に合わせた製品が数多く出回るようになりました。
「髪にいい成分」に実質的な効果はない
今では「髪によい」とされるさまざまな成分を含んだシャンプーやトリートメントも多く存在し、どれを選ぶべきか迷うほどです。
たとえば「ケラチン」。ケラチンは毛髪を構成する重要なタンパク質なので、実際にそれがシャンプー類に入っていれば髪によいと思われるでしょう。しかし、シャンプーをしている短い時間でケラチンが毛根に吸収されることはありませんから、実際には効果はありません。
一方、最近はノンシリコンシャンプーも支持されています。「ノンシリコン」という言葉から、なんとなく「シリコンはよくない」というイメージができ上がっていますが、じつは「シリコン」自体は悪い成分というわけではありません。シリコンには、髪を洗うときに、髪の摩擦を軽減してくれる効果があります。そのため髪が長い女性などはシリコン入りのシャンプーのほうが適している場合もあります。
いずれにしても、「シリコンシャンプーは髪に悪い」というのはウソです。シリコンかノンシリコンかは薄毛とは関係ないという医学論文も出ていますので、あまり気にする必要はないでしょう。