リスクを避けていては「自由」は手に入らない
多くの人は、心では「自由」を欲しています。しかし、実際に選び取ろうとする人は少ないでしょう。自由にはリスクが伴うからです。むしろリスクを避けようとして、安全・安定に走る――特に女性はその傾向が強いようです。
けれど、それではいつまで経っても自由を勝ちとれません。少し厳しい言い方をすれば、安全・安定を求めている限り、富女子になるのは難しいということです。
最近話したある女性は、次のように語っていました。
「結婚するなら、開業しているお医者さんか公務員がいい。だって、生活が安定しそうだから」
この発言に対して、多くの女性は「私もそう思う」とうなずくかもしれません。しかし、私は首をかしげます。医師や公務員と結婚すれば、本当に安定した生活が送れるのでしょうか?
たとえば、「医師」という職業は一見、安定しているように思えます。勤務医より開業医のほうが収入もよさそうです。けれど、医師でも急に重い病気にかかることもあります。そうなれば患者さんの診察はできなくなりますから、医院を続けることはすぐに困難になります。
また、公務員と結婚しても、給料が下がる場合もあります。公務員の給与削減がしばしば話題になっているように、一生安定とはいえません。これは大企業に勤めていても同じです。いつ会社が倒産するか誰にもわかりません。
そして、そもそも離婚のリスクは非常に高いといえます。厚生労働省が2015年1月1日に発表した「人口動態統計の年間推計」によると、約3組に1組は離婚しているという事実もあるのです。
100%の安全や安定はこの世に存在しない
結局のところ、この世界に100%の安全や安定などありえません。どちらも架空のユートピアなのです。しかも、安全・安定を求めようとすると、自由さがなくなります。たとえば、公務員や会社員は自分の時間を会社に拘束されるという点で、不自由といえます。
「安全・安定といわれる場所には、実際には100%の安全や安定はない(=リスクはある)。しかも、自由もない」のです。
何か選択を迫られたときに、安全かどうかで決めるのは意味のないことです。「安全第一」は、今すぐに思考パターンから外すようにしましょう。安心・安全の反対語は「危険」です。しかし自由というのは、実は危険の中にこそあるのです。
つまり、「どんなところにもリスクはある」ということです。だとすれば、自由を選んだほうが人生は格段に楽しくなります。それは私が日々つくづく実感していることです。
勤続年数が長いほど「借りる力」が高くなる
ここで、20代で資産1000万円を築く富女子になるために身につけておくべき「仕事観」についてお話ししておきましょう。
基本的に20代の女性がやってはいけないことがあります。それは転職です。正社員として働きはじめて1、2年であれば、なおさらです。
理由は「銀行のローンが組めなくなるから」です。家を買う、不動産投資をする、起業する……富女子になるために、将来、銀行のローンを組みやすくしておくことはとても重要なのです。
一つの会社に長く勤めるべき理由は、お金を貯めるためではなく、社会的信用を築いて「借りる力」を身につけるためです。富女子を目指すうえで社会的信用を得ることこそとても重要なのです。
では、なぜ転職するとローンが組めなくなるのでしょうか。銀行はお金を貸した以上は返してもらいたいわけですから、ローンの審査では、収入が安定しているかどうかを見ます。安定性を見る指標のひとつが、「勤続年数」です。
私もクレジット会社を経営していますのでよくわかりますが、勤続年数は厳しくチェックします。「3年以上の勤続年数があること」が一般的な審査基準ですが、金融機関によっては「1年以上でも貸しますよ」と言ってくれるところもあるかもしれません。
しかし、実際に借りている人を見ていると、5年は同じところに勤めていたほうが、審査はぐっと通りやすくなっているように感じます。
「転職」はメリットよりもデメリットのほうが大きい!?
よくキャリアアップのために転職すると聞きますが、富女子を目指すのであれば、たとえば、生命保険会社から銀行に転職しても大きくは変わらないと思います。真のキャリアアップは、会社員から独立すること。成功すれば、人生は大きく変わるからです。
今の日本社会における転職は、キャリアアップというメリットよりも、社会的な信用力を落とすというデメリットのほうが大きいと考えておきましょう。
富女子になりたいのであれば、目的もなしに辞めないことです。一つの会社で働いて計画的にお金を貯めて、そのうえで次の人生を考えましょう。
私が運営しているセミナー受講生のなかにも「会社を辞めたい」と相談にやってくる人もいます。「上司とそりが合わないから」「仕事の内容がつまらないから」など理由はさまざまですが、そのたびに私は次のように言います。
「1000万円貯めるんでしょう? 富女子になりたいんだよね。だったら、社会的信用をつけることが第一。やりがいを見つけたり、楽しむために働いているのではなく、信用力を身につけるために働いていると考えてはどう?」
あなたも1000万円貯めるまでは、今の会社にしがみつく気持ちでがんばってください。その先には、何もかも選び取れる「自由」が待っているのですから。
雇用形態によって変わる、銀行から見た「信用力」
勤続年数と並んで銀行がお金を貸す際に重視しているのは、「正社員(あるいは公務員)かどうか」です。現実問題として、契約社員やアルバイトの場合は、審査が厳しくなりがちです。
「契約社員のほうが給料がいい」と言っている女性をよく見かけますが、生涯賃金で見れば、圧倒的に契約社員(非正規雇用の社員)のほうが賃金は低くなります。また、社会的信用度も大きく異なります。
仕事を選ぶときは、「給料が高いかどうか」ではなく「信用力があるかどうか」で選ぶといいと思います。
たとえば、看護師なら違う病院に転職してもあまり信用度は変わらないかもしれませんが、会社員から公務員への転職なら、信用度は上がりそうです。会社員から契約社員への転職の場合、残念ながら信用度は落ちてしまいます。
転職活動を行うときは「銀行目線」で仕事を選ぶ
「私はもう会社を辞めてしまって、アルバイト人生を歩み始めています」という人も中にはいるかもしれません。もしそうならば、今できる中で信用を築いていきましょう。アルバイト先にしても、社会的に見て「堅そうなイメージ」の会社を選ぶようにすることです。
最もオススメなのは、金融関係です。たとえアルバイトでも、銀行に勤めていると聞けば、信頼できそうだと思われるからです。そこからもう一度、正社員への道を探してもいいと思います。
また、現在はアベノミクスによる好景気と若手人材の不足も相まって、正社員を求めている企業も多くあります。
帝国データバンクの調査によると、企業の4割弱が正社員の人手が不足していると回答しています。特に人手不足が急拡大している業種では、「金融」が前回比20.1ポイント増の49.1%――つまり、金融関係の会社の半分は人手が足りていないということです。
この情勢を生かさない手はありません。非正規で働いている人は、正社員になることをあきらめずに積極的に就職活動をしましょう。やりがい、仕事のおもしろさ、会社の雰囲気など、仕事を選ぶ基準はいろいろあると思いますが、将来を考えるのなら、20代のうちは「銀行目線で仕事を選ぶ」ことを心がけましょう。
「好きな仕事=稼げる仕事」ではないことを理解する
もう一つ転職で大切なのは、稼げる仕事を選ぶことです。20代の多くの女性にありがちなのは、「好きなことを仕事にしたい」「やりがいのある仕事を見つけたい」という視点で仕事を選んでしまうことです。
これに反対するつもりはありませんが、富女子への道が遠くなってしまいます。好きな仕事をしているからといって稼げるわけではないのです。逆に、稼げる仕事をしていると、やりがいを感じたり、好きになったりするものです。
つまり、「稼げる仕事をする→評価される→満足する→仕事を好きになる」という思考が富女子になるためには必要なのです。多くの女性は発想が逆になっています。
お金を稼げる仕事として、リストを作りましたので、もし、これから仕事を選ぼうとか、転職を目指そうという方は参考にしてください。
【図 給料の高い職種】
「山の裾野をぐるぐる回っている」と将来が見えない!?
なぜ、一生懸命やっているのに富女子になれないか何となく「一生懸命仕事をしている人」に考えてほしいことがあります。それは、自分がやっている仕事の先に、未来が見えているかどうか、ということです。
よく「一生懸命働けば、お金持ちになれる」「努力は報われる」と言いますが、本当でしょうか。ただ一生懸命に働いていれば、いずれは富女子になれるのでしょうか。残念ながら答えはNOです。
そもそも今の日本では、一生懸命に働いていない人、努力をしていない人を見つけることのほうが難しいと思います。大企業の社長だって、コンビニエンスストアの店員さんだって、繁華街の片隅でギターを弾いている人だって、みんなまじめに働いています。
では、お金持ちになっている人と、そうではない人と何が違うのでしょうか。その違いとは、「努力の方向性を見極められているかどうか」ということです。
多くの人が間違えているのは、本来富士山に登頂するのなら、一生懸命上を目指して登らないといけないのに、なぜか裾野をぐるぐると回っている、ということです。
今、自分がやっている方向の先に何が見えるか―ぜひ一度立ち止まって検証してみてください。もし先(将来)が見えないとすれば、すでに頂上に辿りついている人にアドバイスをもらいましょう。一緒に走っている人に聞いても、なかなか良い知恵は出てこないものです。
永田 雄三
株式会社ワイズアカデミー 代表取締役社長