いい老人ホームだと近所で評判だったのに、入居したら酷い目に遭った――。老人ホーム選びでは口コミがまるで頼りにならないのはなぜか。それは、そのホームに合うか合わないかは人によって全く違うから。複数の施設で介護の仕事をし、現在は日本最大級の老人ホーム紹介センター「みんかい」を運営する著者は、老人ホームのすべてを知る第一人者。その著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

介護職員の得手不得手は、2つに分かれる

その昔、私が老人ホームで介護職員をしていたころ、いったい一日に何回「ありがとう」と言われるのだろうかと興味がわき、数を数えたことがありましたが、実に8時間の勤務時間内で45回感謝をされていました。茶を出すと「ありがとう」、飲み終わった湯呑を下げると「ありがとう」、部屋にご機嫌うかがいをしただけで「部屋に来てくれてありがとう」「気にかけてくれてありがとう」という具合です。

 

小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)
小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)

一般社会の中では、けっしてお礼など言われるようなレベルではない些細なことでも、「ありがとう」と言ってくれるのが老人ホームの入居者です。

 

考えてみてください。たとえば、自動車のセールスマンがお客様の家に自動車の販売目的で行ったとしましょう。多くの家からは、「うちはけっこうです」「何をしに来たのですか」と“けんもほろろ”に拒絶されるはずです。

 

読者の皆さんは、いったいどちらの仕事が本当にハードな仕事だと思いますか?

 

「身体介助業務」と「生活支援業務」。皆さんは、いったいどちらが大変な仕事だと思われるでしょうか?多くの方は、当然「身体介助業務」のほうが大変な仕事だと思うに違いありません。しかし、私の経験では、多くの介護職員は「生活支援業務」のほうが大変だと考えています。もちろん、この話は介護職員全員に当てはまる話ではありません。

 

もう少し、詳細を見ていきましょう。「身体介助」とは、特に認知症の高齢者や寝たきりの高齢者に対して実施する介護業務です。たとえば認知症を患い、「食事を上手く取ることができない」「排泄を上手くすることができない」「入浴を一人ですることができない」などというような場合、介護職員がその一部または全部を支援し、それらの行動がスムーズに実施できるようにお手伝いをします。

 

もちろん、介護職員にとって多少の体力は必要ですが、主導権は介護職員側にあるので、介護職員が自分の考えや方針に沿ってやりたい流儀で仕事を進めることが可能と言えます。実は、ここが大きなポイントです。

 

逆に、「生活支援介助」は、肉体的な重労働はほとんどありません。しかしその分、入居者の話し相手などの仕事をはじめ、礼儀作法や言葉遣いなど、入居者の好みや考え方に気を遣い、自分を相手に合わせていかなければスムーズな仕事ができない業務です。

 

同一法人内に高級な老人ホームと重介護専門の老人ホームを擁している企業の話ですが、高級な老人ホームから重介護ホームへ(またはその逆もありますが)職員の人事異動を検討した場合、たとえ、同一法人内で、さらに同一地域内であったとしても、実際に異動させるのは難しいとされています。

 

どちらの職員からも異動命令は拒絶され、ともすると辞表が出てくるケースも珍しくないからです。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

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