税金で維持される介護保険事業者の経営
私の解釈では、「個人の老後に対し、昔のように国が丸抱えで面倒を見ることはできないので、皆さん自分で対策を考えて自己責任でお願いします」と言っているような気がしてなりません。「ピンピンコロリ」という、昔からよく言われている言葉があります。自分の老後を真剣に考えた場合、この言葉には妙に納得感があり、昔の人は上手いことを言うものです。
読者の皆さんは、生活保護についてどこまで理解できているでしょうか? 私は、自分の老後のことを真剣に考えた場合、いざとなったら「生活保護」で生きていくという方法もあるのかな、と思っています。
生活保護は、国民の権利なのですから、該当する方は申請し受給をすることになんらためらうことはないと思います。しかし、その原資は税金であり、税金の原資は一人ひとりの国民が働いて稼ぎ出す所得の一部ということになります。したがって、私のように「老後は生活保護で暮らしていく」と多くの高齢者が考え、実行した場合は保護費の予算が枯渇し、やがて支給することすらできなくなってしまいます。だから、なんとか自分は生活保護に頼らなくても自活できるようにしていかなければ、とも思っています。
現在、老人ホームの中には、要介護認定さえ受けていれば、生活保護受給の高齢者を積極的に受けているところもあります。もちろん、多くの老人ホームは、社会福祉の観点から、かかるコストを企業努力で極力減らし、困っている貧困高齢者を対象に運営を行なっているところも多くみられます。
しかし、中には「貧困ビジネス」と言われるように、要介護の生活保護受給対象高齢者であれば、文句を言う家族もいないし、適当に介護支援サービスをやっているふりをして介護報酬を受け取り、莫大な収益を上げている悪質な老人ホームもあるようです。
いずれにしても、高齢者介護ビジネスのスキームは前述の通り「タコの足食い」であり、公的資金によって介護保険事業者の経営は維持されているのが実態なのです。介護サービスが必要な高齢者が増えるにしたがい、介護報酬も増え続け、結果、税金の負担も多くなるという構図がある限り、介護保険業界の拡大を手放しで喜んでいるわけにもいきません。