ビタミンCと尿の関係、レム睡眠と金縛りの関係
そもそも、なぜ筆者がこうした健康法の検証を始めたのか。それは、筆者が両親の影響を受けて幼い頃から“実験好き”だったことに起因しています。
筆者の両親は、祖母が甲状腺がんで亡くなったこともあって健康情報に敏感で、「がん予防」とか「体に良い」と偉い先生が言うと信じ、積極的に取り入れていました。
なかでもビタミンCに強く関心を示し、家には大量のビタミンCが積まれていたほどです。それというのも、ノーベル化学賞と平和賞を受賞した米国の化学者ライナス・カール・ポーリング博士が、大量のビタミンCを摂取すると風邪が治ったり、がん予防になると唱えたりしたことで、ビタミンCブームが起こっていたからです。
ですから、筆者が子どもの頃は家では毎朝、ビタミンCを飲むのが日課でした。すると、昼過ぎになると濃い黄色というか、黄緑色に近い尿が出るのです。その後、夕方になるにしたがって尿の色がだんだん薄くなり、夜になる頃には普通の黄色に戻ります。そして、翌朝にまたビタミンCを飲むと、昼頃に黄緑色の尿が出るのです。
尿が黄緑色になるのはビタミンCの影響に違いないと思った筆者は、飲む量を変えてみることにしました。そうすると、たくさん飲むと尿の色は濃くなり、少し飲むと薄くなり、まったく飲まないと普通の尿の色になることが分かったのです。これにより「やっぱりビタミンCは黄緑色なんだ」と、当時は信じていました。
もちろん、今はビタミンCが無色であることは知っていますが、子どもの頃はビタミンCというと黄色のイメージが一般に浸透していたので、自分では実験で確かめた気になっていたのです。この経験で、子ども心に自分が口にした物で尿の色が変わることを知り、トイレに行くたびに尿の色を確認する習慣がつきました。
現在、腎臓の専門医である筆者は、いうなれば「おしっこ先生」みたいなものです。今思うと尿を観察していた記憶が頭の片隅にあり、無意識にこの分野を選んだのかもしれません。しかし、医者を目指すようになったのは、また別の経験からでした。
筆者は学生時代、よく金縛りにあっていました。もう40年以上も前のことですからインターネットはなく、人に相談すれば〝霊の仕業”とされる時代です。仕方なく図書館に行ってさまざまな本を読み漁り、ようやくたどり着いたのが睡眠のメカニズムでした。
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、浅い眠りのレム睡眠のときには脳は起きているけれど体は休んでいるので動けなくなって金縛り状態になるとか、夢を見る、ということが書かれていたのです。
このことを知ったときは「これだ!」と、一気に霧が晴れたような清々しさを感じ、心底嬉しかったことを今でも覚えています。
ですから金縛りと睡眠は、筆者が医者になる決心をした原点ともいえます。
こうした体験から、人は分からないことに不安を覚えるので、疑問に思ったら放っておかずにとことん調べたり、自分で検証したりしてみると納得がいき、安心もできると思うに至りました。
それ以来、疑問が生じると追究したい、真実を知ったときの爽快感をまた味わいたいとウズウズしてきます。こういう好奇心も筆者の原動力になっています。