最近大きく変わったのは「糖質」に対する考え方
いつまでも健康で元気に暮らしたい。大きな病気をして周囲に迷惑をかけたくない。丈夫な体を維持して、老後の人生を謳歌したい。
多くの方がこのような思いから、健康に関心を持ち、さまざまな健康法を試していることと思います。そういった世相を反映してか、メディアではさまざまな健康法が絶えず取り上げられ、なかには常識と化しているものもたくさんあります。
筆者はこれまで、こうした一般に浸透して常識になっている健康法を、自ら試すことで検証してきました。すると、一般では定説になっていることが、現代の医学から考えると間違いであることも非常に多いと気づきました。
その例の一つが、糖質に対する考え方です。糖質は体を動かすエネルギー源ですから、摂らないと生命活動を維持できなくなるといわれてきました。特に、脳の唯一のエネルギー源である糖質が不足すると、思考能力が低下するというのは、誰もが信じて疑わない定説となっています。ですから皆さんは、疲れたときにはチョコレートなどの甘い物を食べてエネルギー補給をしているのではないでしょうか。
ところが近年は、糖質以外にもエネルギー源はあり、脳でも利用されることが分かってきました。それが「ケトン体」という物質です。
ケトン体とは、脂肪酸からつくられるエネルギーのことをいいます。人のエネルギー源は主に糖質(ブドウ糖)ですが、ブドウ糖が不足すると筋肉や脂肪細胞に蓄えている脂肪(脂肪酸)を燃やしてエネルギー源として使うようになります。このときに肝臓でつくられる脂肪やアミノ酸の代謝物がケトン体です。
以前は、人の体には2系統のエネルギー回路があり、メインのエネルギー源はブドウ糖で、ケトン体はブドウ糖が枯渇した、つまり飢餓状態に陥ったときに働くサブのエネルギー源と考えられていました。そのため、糖質の不足は生命の危機で、通常はケトン体が血液中に出ることはなく、出るのは悪いこととされてきました。
実際に、ケトン体というと筆者がかつて学んだ医学の教科書には、糖尿病が重症化したときに起こる、ケトアシドーシスという極めて重篤な状態を連想させる物質として書かれており、どちらかというと悪者扱いされていました。ですから、「ケトン体」をエネルギー源にすると最初に知ったときは、体に悪影響を与えるのではないかと危惧したものです。
ところが、私自身が二度目のダイエットの実験として試してみると、確実に体重が減っていき、それでも体調を崩すことはありませんでした。しかし、長期的に見なければ結果は分かりません。短期間なら問題はなくても、長期間にわたって行うと健康を害するケースはよくあるからです。
そこで、趣味であるマラソンをしばらく続けてみたところ、エネルギーが不足することはなく、むしろコレステロール値や血糖値が下がり、血圧も安定してコントロールがしやすくなったのです。
本当はケトン体がメインのエネルギー源で、ブドウ糖のほうがサブにあたるのではないかと感じたほどでした。