孤独に暮らす男性が、病気で困っていたときに手を差し伸べてくれた同僚と義理の甥のやさしさに感激…。住む場所も知らない疎遠な姪ではなく、尽くしてくれた他人に遺産を渡すにはどうしたらいいのでしょうか。実際の相談事例を見ていきましょう。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
他人への遺贈を実現するには「事前の根回し」も重要
相続人でない人に自分の財産を遺贈する場合は、遺贈したい人の住民票が必要です。一方的に書き残しておくよりも、事前にT中さんやW辺さんに自分の意思を伝えて了解をもらっておくほうがスムーズなのです。T中さんとW辺さんにそのようにお伝えするようアドバイスしたところ、快く受けてもらうことができ、住民票もすぐ用意してくれました。
E藤さんは願っていた通りの遺言書を作成することができました。遺言執行もW辺さんが引き受けてくれることになり、E藤さんの不安は解消しました。
どこに住んでいるのわからない疎遠な姪たちより、身近で支えてくれた親しい人に財産を渡すことができるのはとても幸せなことだと、手続き完了後、E藤さんは穏やかな笑顔を見せてくれました。
今回のケースでポイントとなったのは、以下の3点です。
●相続人の姪とは連絡先もわからないくらい疎遠
●遺言を用意しておかないと、財産を相続人以外の人に渡すことができない
●財産だけでなく、葬儀やお墓のことが不安
遺贈する旨の遺言をひとりで決めて、ひとりで作成しておくだけでは十分ではありません。希望通りの結果を実現するには、受贈者へ事前に意思を伝えておき、了解をしてもらうことが大切です。なによりそのほうがスムーズですし、また、自分でも生前に先方の意思確認ができるため、安心なのです。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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