世界的に超低金利時代へ突入している。そんな状況下、新型コロナウイルスの感染拡大で、事態はまさに「打つ手なし」。しかし、ここにきて注目されているのがMMT(現代貨幣理論)である。有識者から袋叩きにあい、さらにネット上でも支持派と否定派が議論を繰り広げている。MMTは救世主なのか、トンデモ理論なのか。本連載は、経済アナリストの森永康平氏の著書『MMTが日本を救う』(宝島社新書)を基に、MMTとはどんな理論なのかをわかりやすく解説していく。過去の著書には父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)がある。

コロナ問題を織り込まず、株式が暴落した理由とは……

過去の経済危機、たとえば00年のITバブルの崩壊や08年のリーマン・ショックでは、必ずと言っていいほど株式市場の急落がつきものであった。では、新型コロナウイルス問題においてはどうだったのか。結論から言えば、今回も株式市場には大きな影響があった。後述するが既に「コロナショック」という言葉すら生まれている。新型コロナウイルスによる感染状況は深刻になる一方だが、株式市場という観点からすれば3月が最悪期だったのかもしれない。日本株市場を見るために日経平均株価、米国株市場はNYダウを見てみよう。

 

00年からの月間騰落率を見てみると、日本では20年3月の▲10.5%が6位に、米国では20年3月の▲13.7%が2位にランクインしている。更に、米国おいては前月の2月の▲10.1%も7位に入っている。この間にはITバブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災、欧州債務危機、チャイナショックなど、様々な経済環境の悪化があった。それを考えれば、今回のコロナショックによる株式市場の急落がいかにすごかったかがわかるだろう。

 

株価指数の騰落を見る場合、騰落幅で報じられるケースもあるが、実際には騰落率で比較するべきなので、本連載では「率」での表記を心掛けているが、3月の1カ月間において前日からの下落率が高かった上位5日を見てみると、日本では1日で5%以上も下がった日が2日あるが、米国では10%以上下がった日が2日あり、上位5日は全て5%以上下がっている。3月13日の日本の株式市場では前日比1128円58銭(6.1%)安となり、終値としては16年11月11日以来、3年4カ月ぶりの安値となった。取引時間中には1800円超にまで下げ幅を広げる場面もあった。この日は東証1部の値下がり銘柄数は2099と全銘柄の約97%で、全面安という状態だった。その3日後、16日の米国の株式市場ではNYダウが前週末比2977ドル10セント安となり、下げ幅は過去最大となった。NYダウを構成する全30銘柄が下落した。

 

航空機のボーイングの株価は1日で2割以上下落したほか、中華圏以外の全ての直営店を閉鎖するというニュースが出たアップルも1日で13%も株価を下げた。株式市場が短期間でこれだけ下落したのは、投資家が新型コロナウイルスが経済や企業業績に与える悪影響を正確に判断して、株式市場がそれを織り込んだというわけではないだろう。なぜなら、新型コロナウイルスの問題がいつどのようなタイミングで収束するかは誰にも予測できていないからだ。

 

では、なぜこれほどまでに株式市場は暴落したのか。それにはテクニカルな理由がある。昨今運用業界を席巻しているインデックス運用(日経平均など株価指数に連動するようにする運用手法)やリスク・パリティ運用(株や債券など投資している各資産のリスクの割合が均等になるように分散し保有する運用手法)の存在に加え、アルゴリズム取引、AI取引が普及した。そのため株式市場が一度大きく下落すると、運用の仕組み上、多くの銘柄が業績に関係なく一斉に売られやすくなる。

 

これから新型コロナウイルスの影響が経済や企業業績に与えた結果が、経済指標や企業決算というかたちで明らかになってくる。そこから初めて、新型コロナウイルスがもたらした様々な変化に対する株式市場の評価が始まっていくのだろう。

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MMTが日本を救う

MMTが日本を救う

森永 康平

宝島社新書

新型コロナウイルスが猛威を振るい、世界経済が深刻な落ち込みを見せる中、世界各国でベーシックインカムや無制限の金融緩和など、財政政策や金融政策について大胆なものが求められ、実行されている。そんな未曾有の大混乱の最…

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