世界的に超低金利時代へ突入している。そんな状況下、新型コロナウイルスの感染拡大で、事態はまさに「打つ手なし」。しかし、ここにきて注目されているのがMMT(現代貨幣理論)である。有識者から袋叩きにあい、さらにネット上でも支持派と否定派が議論を繰り広げている。MMTは救世主なのか、トンデモ理論なのか。本連載は、経済アナリストの森永康平氏の著書『MMTが日本を救う』(宝島社新書)を基に、MMTとはどんな理論なのかをわかりやすく解説していく。過去の著書には父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)がある。

コロナ問題勃発で、「泣き面に蜂」な日本経済

2020年は年明け早々に、新型コロナウイルス問題という昨年の消費増税に続く悲劇が起こった。世界各国が新型コロナウイルス問題の対応に取り組む中で、日本は他国よりも厳しい状態で問題対応に臨んでいるといえる。消費増税で経済が弱っているところに 新型コロナウイルス問題が起きたわけだから、まさに「泣き面に蜂」状態だ。

 

一度に2つの悲劇に襲われているのは、世界でも日本と香港ぐらいだろう。香港は 19 年3月から逃亡犯条例の改正案に反対するデモが起きた。6月には主催者発表 で100万人以上が参加するデモが2度もあり、香港経済は壊滅的なダメージを受けた。香港政府は 19 年の実質GDP(域内・速報値)は前年比1.2%減になった と発表した。通年でマイナス成長となるのはリーマン・ショック後の09年以来、10年ぶりのことだ。

 

日本では、消費増税による大幅なマイナス成長は 20 年1〜3月期から回復するという解説をよく目にしていたが、その淡い期待は新型コロナウイルスの登場によって消え去ってしまった。少なくとも20年4〜6月期までは3四半期連続でのマイナス成長が市場のコンセンサスとなっている。

 

「コロナショック」がこれまでの経済危機と違うのは、そもそもの要因がウイルスという目に見えないものであり、執筆時点の4月時点では特効薬やワクチンもなく、いつ問題が収束するかも、最悪期がいつなのかもわからない。その不安が、経済活動を一層収縮させるという点だ。

入国制限で中韓が主力のインバウンドは壊滅的

今回、大打撃を受けた産業として真っ先に思い浮かぶのは観光業や宿泊業である。新型コロナウイルスがいかに日本の観光業に大打撃を与えたかをデータに基づいて確認してみたい。

20 年4月に日本政府観光局(JNTO)が発表した20年3月の訪日外客数の推移を見てみると19万3700人 だ。前年同月比93%減という大幅減である。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

先述した通り、中国政府が団体ツアーを禁止したため、例年に比べて中国からの観光客が大幅に減少したことが主な要因だ。19 年3月の訪日外客数は約276万人で、そのうち69.1万人、つまり全体の 25 %を中国からの外客数が占めていた。それが、 20 年3月の中国からの 外客数はわずか1万人。全体の5.4% までシェアが落ちている。中国からの外客数は前年比で98.5%減となった。日本においてインバウンド事業は注力している分野の1つであり、政府は20 年に年間訪日外国人旅行者数を4000万人とする目標を掲げていた。しかし今回の新型コロナによって目標達成は絶望的だろう。

 

19年の訪日外客数を見ると全体の47.6%と半数近くを中国、韓国の2カ国が占めており、同年の訪日外国人の旅行消費額を見ても、中韓で45.6% と半数を占めている。3月9日に中韓両国に対して入国制限をかけたことで、日本のインバウンドへの影響は人数面でも金額面でも相当厳しい下押し圧力を受けることになる。

 

帝国データバンクや東京商工リサーチがそれぞれ新型コロナウイルス関連の倒産情報を発表しているが、感染者数と同様、4月からは毎日のように倒産する企業が増えている。業種は様々であるが、旅館・ホテル、旅行代理店など、やはりインバウンド需要に関連する業態の倒産が目立つ。

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MMTが日本を救う

MMTが日本を救う

森永 康平

宝島社新書

新型コロナウイルスが猛威を振るい、世界経済が深刻な落ち込みを見せる中、世界各国でベーシックインカムや無制限の金融緩和など、財政政策や金融政策について大胆なものが求められ、実行されている。そんな未曾有の大混乱の最…

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