世界的に超低金利時代へ突入している。そんな状況下、新型コロナウイルスの感染拡大で、事態はまさに「打つ手なし」。しかし、ここにきて注目されているのがMMT(現代貨幣理論)である。有識者から袋叩きにあい、さらにネット上でも支持派と否定派が議論を繰り広げている。MMTは救世主なのか、トンデモ理論なのか。本連載は、経済アナリストの森永康平氏の著書『MMTが日本を救う』(宝島社新書)を基に、MMTとはどんな理論なのかをわかりやすく解説していく。過去の著書には父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)がある。

なぜ増税?…政府に都合のいい3つの“言い訳”

MMTが正しいのならば、変動相場制を採用しており、自国通貨を発行できる日本は財政赤字を気にする必要はないわけで、そもそも消費増税をしなくてもよいのだが、なぜ増税を実施したのか。

 

これまで通り、極力中立的な立場で説明を重ねたいため、その理由を財務省が公表している資料から見ていきたい。内閣府の『令和元年度 年次経済財政報告』には消費増税する理由として、財政健全化のほか、社会保障について言及されている。財務省が公表しているデータによれば、1990年度の当初予算において、66.2兆円の歳出のうち、17.5%に当たる11.6兆円が社会保障費だった。

 

しかし、少子高齢化が進んだことで、2019年度の予算では、99.4兆円の歳出のうち、34.2%に当たる34兆円を社会保障費が占めており、この30年間で社会保障費は約3倍に膨れ上がったことがわかる。19年度予算における一般会計歳出101兆4571億円のうち、社会保障費は34兆593億円であり、歳出総額の約3割(33.6%)を占めるまでになった。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

基本的には社会保障費は保険料で賄うものだが、それだけだと現役世代に負担が集中してしまう。そこで、国債の発行や税金でも賄っているが、国債は子どもや孫の世代に負担を先送りにしていることと等しいとして、消費増税によって財政の健全化を図ろうとした。

 

財政健全化のために消費増税を選択した理由は3つ挙げることができる。1つ目は、消費税は所得税や法人税に比べて、景気の動向に左右されにくく、安定的に徴収できる点だ。これは財務省のホームページに公開されている一般会計税収の推移の図を見ればわかる。2つ目は、消費税はモノを買ったり、サービスを受ける際に支払うため、現役世代だけではなく、国民全体が支払う対象となり、公平だという観点。3つ目は、消費税が収入や貯蓄、投資には課税されないため、消費以外の経済活動には影響を与えないということが挙げられる。

 

この説明を見れば消費増税も仕方ないと思えるかもしれない。

 

ただ、いま挙げた消費税の特徴は裏を返せば恐ろしいことを言っているという目線は持つべきだろう。たとえば、1つ目に挙げた「消費税は安定した税源」というメリットは徴税する立場からの目線であり、徴収される側から見れば、景気が悪化して所得が減ろうが、職を失おうが関係なく定率で徴税されるという見方もできるからだ。

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MMTが日本を救う

MMTが日本を救う

森永 康平

宝島社新書

新型コロナウイルスが猛威を振るい、世界経済が深刻な落ち込みを見せる中、世界各国でベーシックインカムや無制限の金融緩和など、財政政策や金融政策について大胆なものが求められ、実行されている。そんな未曾有の大混乱の最…

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