老人ホームの入居者はまさに十人十色
老人ホームには、当然、向いている高齢者と、向いていない高齢者が存在します。
この稿では、老人ホームで好かれる人と嫌われる人について、話を進めていきましょう。嫌われる?というと不安になる方も多いと思いますが、ご安心ください。どのような老人ホームでも、皆さんに合った介護職員の一人ぐらいはいます。たとえ皆さんが人からどんなに嫌われていようとも、誠心誠意ひたむきに、献身的に尽くしてくれる介護職員は必ずいるのです。本書を隅から隅まで熟読すれば、老人ホームの正しい実態を理解することができるので、ご自身の対策を打つことができると思います。
「それを言ってはお終いよ」という話になってしまいますが、結局のところ、老人ホームで介護職員に嫌われる高齢者は、自宅にいても家族から嫌われ、グループにいてもグループから嫌われるということになるのです。
老人ホームの入居者の割合は、圧倒的に女性が多いのですが、近年では男性入居者も増えてきています。さらに、老人ホームで働く職員も圧倒的に女性が多く、男性も増えてきているとはいえ、管理職が中心で、まだまだ少数派であるのが現状です。そんな老人ホームの中で、どうしても介護職員から嫌われてしまう入居者が、どこのホームにも必ず数名存在します。これもまた現実なのだと、ご理解ください。
念のために申し上げておくと、たとえ介護職員から嫌われたとしても、意地悪をされたり虐められたりすることは、まずありません。介護職員の多くは、心の優しい、お節介の好きな人種です。さらに、虐待防止や身体拘束禁止など、高齢者の尊厳について日々日常的な研修や教育を受けているので、万一不謹慎な介護職員がいたとしても、組織として早期に発見することができ、修正をしていくことが可能です。時折、ニュースで取り上げられる入居者に対する虐待などは、特別なケースだと考えたほうがよいと思います。
そうは言っても、介護職員とて生身の人間です。入居者からいわれなき中傷や暴言、暴力を加えられた場合は、頭にも来ます。それが認知症などの高齢者独特の疾患から来ているものだと十分に理解していたとしても、です。夜勤中、さまざまな予期せぬアクシデントが重なり、少ない介護職員らと必死に対応している時などに、認知症の入居者から「お腹がすいた」と訴えられたりすると、その声は耳には入っていますが、無視をしたことは私自身、何度もあります。優先順位を考えた場合、認知症高齢者の空腹に対する訴えよりも、急変した入居者の差し迫った状態への対応が優先される、ということになるからです。