近年、「副業」が世間の高い関心を集めている。不景気で実収入の減少に加え、増税も後押しし、ますます家計を圧迫する現状が続く。自身も多数の副業を手掛ける俣野成敏氏が、将来に不安を感じるすべてのサラリーマンに「副業」のメソッドを紹介する。本連載は俣野成敏著『サラリーマンを「副業」にしよう』(プレジデント社)から一部を抜粋した原稿です。

副業するなら、自分の事業を持つ「個人事業主」

私が、副業としてオススメするのは、Sクワドラント(個人事業主)一択です。「自営業者」とも言い換えることができますが、本書では、「S=個人事業主」で統一したいと思います。個人事業主といっても、フリーランスやノマドワーカー、ギグワーカーなど、いろいろありますが、ここでは「自分の事業を持ち、それで他者と商売をしていること」と定義して話を進めていきます。

 

それでは、副業としてSクワドラントを選ぶメリットを、3つ挙げておきましょう。

 

理由の1つ目は、他人との差別化が図りやすいこと。自分の事業を立ち上げ、育てていくことで、差別化ができれば、「あなたから買いたい」と言ってもらえるようになるのも、夢ではありません。

 

2つ目は、「損益通算」が可能であること。損益通算とは、給与所得者が事業を行って損失が出た際に、給与所得などから損失分を差し引くことが可能になるという、税制度です。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

税務署に開業届を出すことにより、ほかの所得と損益通算ができたり、青色申告を行っていれば、最高65万円の特別控除が使えたりするなどのメリットがあります。ただし、個人事業として認められるには、「独立性」「継続性」「反復性」が必要です。一過性の収入とみなされてしまうと雑所得に分類され、損益通算はできなくなってしまいます。

 

少し難しく感じてしまうところかもしれませんが、個人事業主になること自体は難しくありません。確かに、確定申告には専門知識が求められますが、年間5万円くらいから業務を代行してくれるところはあります。もちろん、その費用も経費にできます(代金は事業体や作業ボリュームなどによる)。

 

「法人のほうが個人より税率は低いのでは?」と思われた方もいらっしゃると思いますが、サラリーマンが副業をやる場合、次のステージ(2)以降での法人化がオススメです。

 

ステージ(2)個人事業が赤字→確定申告で還付される。

ステージ(2)個人事業が黒字化→法人化を検討する。

 

法人を設立(「法人なり」といいます)しても、個人事業とサラリーの損益通算ができなくなるだけで、サラリーマンであっても法人を持つことは可能です。損益通算により税還付がなされるのは、サラリーマンと個人事業を通算した時に、個人事業が赤字だから起こる現象です。

 

「いくら税還付がなされても、赤字の事業を持っていては意味がないのでは?」と思われた方もいると思います。ここが個人事業主とサラリーマンの大きな違いなのですが、サラリーマンは、年収に応じて税務上で控除できる経費が決められていますが、個人事業主は、事業発展のために自分で事業にとって必要な経費を自分で決めなくてはなりません。

 

もちろん、「無駄遣いしましょう」ということではありません。たとえば、家賃10万円の賃貸マンションに住んでいて、半分のスペースを個人事業のために使うということであれば、月5万円を経費計上できます。それだけで年間60万円の経費が生じます。携帯電話やパソコンも同様の考え方です。飲食店で仕事の話をしたら、会議費や交際接待費となります。

 

いかがでしょうか? 今は単なる支出として出ているお金が、個人事業を始めることで事業性を帯び、その諸経費の合計だけでも年間100万円くらいになるのは珍しいことではありません。この場合、個人事業の年商が100万円になるまでは、かなり助かる制度になるはずです。具体的にいくら還付されるかは、赤字の金額とサラリーマンの年収によって変わってきますが。

 

注意点としては、たとえば、自分の信用力(与信と言います)を使って金融機関から借入を予定されている方は、損益通算で個人事業の赤字申告をすることは不利に働くことがあります。向こう数年以内に自宅購入などでの借入予定がある方は、ご注意ください。

 

3つ目は、「自分で引退時期を決められる」ということです。これからは、自分の事業を持ち、会社の定年とは関係なく生きがいを持って働く人たちが、増えていくのは間違いないでしょう。私たちの人生において、重みを増してきた「老後をどのように過ごせばいいのか?」と「老後資金をどうやって準備すればいいのか?」の2大テーマに対して、一挙両得を狙えるのが、本連載で取り上げる「副業」なのです。

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サラリーマンを「副業」にしよう

サラリーマンを「副業」にしよう

俣野 成敏

プレジデント社

「老後2000万円問題」「働き方改革」「残業規制」…等々。政府も会社も「自助努力でなんとか生きよ」と突き放す中、コロナ・ショックによる「リストラ」が、さらに追い討ちをかけています。一方で、自己責任の名のもとに「副業…

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