いつの時代もなくならない相続トラブル。「生前しっかり話し合ったから大丈夫」…ではないのです。相続発生後、まさかの事態が起きてしまったら? 今回は、相続した不動産が「事故物件」として扱われてしまった実例を、相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏が解説します。 ※本連載は遺言相続.com掲載の事例を編集したものです。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

売却を進めるはずが…きょうだい唖然の事態が発生!

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Cさん「家…いる?」

 

Bさん「どうだろう。兄さんの思い出が詰まってるけどなぁ。お前も俺も遠いところに住んでるし、家庭もあるし。Cが良ければ売るのもいいかと思うけど」

 

Cさん「うん、そうだよね。私もそう思ってた」

 

今後利用することもない。手放すのは悲しいけど、持っていたら維持管理費がバカにならない…。2人とも売却に異論はありませんでした。

 

【売却にあたっての希望条件】

■売却して現金を2人で分けたい(持分2分の1ずつ)
⇒ それぞれ別の場所で生活しており、維持・管理が大変であるため

 

■テナントが入居したままで売却してほしい
⇒ テナントを退去させることは難しいため(テナントは歯科医院)

 

上記の内容を踏まえ売却を進めていたところ、買い手が見つかり、契約条件もスムーズに整いました。

 

ところが、思わぬ事態がきょうだいを襲います。

 

いよいよ迫った契約日の3日前、自宅の店舗部分で歯科医院を営む院長が、なんと院内で突然死してしまったのです。具体的な死因は明かされていません。「院長、若かったのに。働きすぎたのかしら…」「自殺って聞いたけど…」。小さな街のちょっとした騒ぎとなってしまいました。

 

■兄の大切な自宅が「心理的瑕疵物件」になった

 

まだ契約前ではあったものの、この事実は買い手に伝えなければいけません。知られずにいれば「事実不告知」にあたり、宅建業法違反に該当する可能性があるからです。「突然のことで我々も驚いているのですが…」とメールしたところ、送信して間もなく、買い手から電話が届きました。

 

「驚きました。購入はいったん白紙に戻してください。死者が出た手前、このまま買うっていうのはちょっと話が違います。…ちなみになんですけど、もしやっぱり買うってなったら、当然大幅値下げになりますよね?」

 

横暴な言いぐさでした、とBさん。

 

「いくらをご希望でしょうか?」

 

一般的に、事故物件の価値は相場の2~3割ほど安くなるといわれています。しかし買い手は、さらに低い価格を提示してきたのです。

 

「えっ⁉ そんなに安く⁉」

 

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きょうだいは、そこまでの値下げは想定していませんでした。「いくらなんでもその値段は…」と伝えてみても、買い手は「事故物件ならこんなものじゃないんですか?」と強情な姿勢を崩しません。

次ページまたまた問題発生。院内には山積みの…

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2020年7月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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