「二十年後に返済終わるし」呑気な地主だったが…
それでも、当人は、「二十数年後にローンの返済が終われば、マンションは残るから」と全く気にしていない様子です。
しかし、借り入れのうち元本部分は経費になりません。つまり、家賃収入のうち、少なくとも元本を返済する部分については、「利益」とみなされ税金がかかってくることになります。
「所得税はどうするのですか? それから、住民税も支払わなければなりませんよ。でも、納められるだけの現金収入がありませんよね」
私がそう言うと、途端にクライアントの顔色がさーっと変わりました。事前に相談してもらっていれば、無計画にマンションを建てさせるようなことはしなかったのにと思いましたが、建ててしまった後ではもはやどうしようもありません。そのような建築計画は事前の相談が肝心です。
■家賃保証の条項は全文をしっかりチェックする
そもそも、不誠実な建築業者の場合は、顧客の収支など全く気にしてくれません。業者が考えているのは、その土地に建つ最大限のものを、つまりは、顧客の資力から最大限の建築費が見込めるものを建てさせようということだけです。
たとえば、本来であれば、建築後の税金や返済金などを考えれば、2億円ぐらいのイニシャルコストで建てるのが最も理想的な土地であっても、容積率ギリギリのところ(たとえば4億円の建物)まで建てさせようとします。
このような物件は、もちろん手持ち資金だけでは建てられず、大部分を銀行等からの借り入れでまかないます。そうすると、仮に運よく「入り=賃料」がよかったとしても、月々の返済額も大きくなります。この返済が、次第に、ボディーブローのようにじわじわときいてくるはずです。
はじめは満室でも、月日がたてば、空室率が上がってくるかもしれません。そうなれば、毎月の賃料で銀行に借りたお金を返済していくというプランが破綻することになります。
実際、気づいたときには当初の計画では回らなくなっていて、「返済のために家の裏にある農地を売らなければならなくなっていた」などということは珍しくありません。バブル期に建てられたマンション、アパートについてはそのような例が散見できます。