約1億6000万円もの現金を失った巨額詐欺事件も…
相続では莫大な額のマネーが動きます。お金が動けば、当然のことながら、そこには様々なビジネスの機会、つまりは「相続ビジネス」のチャンスが生まれます。一説によれば、その市場規模は50兆円になるともいわれるほどです。
そのような相続ビジネスのもたらす巨大な果実をわが物にしようと、有象無象の業者が地主を虎視眈々と狙っているのです。
前述のように家長を失った相続人は、全く何もわからない状態にあって不安な思いにとらわれています。そのような状況の中で、「こうすれば、相続税が安くなりますよ」と親切げにアドバイスをしてくれる人が現れれば、わらにもすがる思いで頼りたくなるはずです。相続ビジネスにかかわる業者の中に、相続人のそうした弱みにつけ込んでくる不誠実な者がいることは否定できません。
ことに、農家の人たちには、一般に、純朴で人を疑うことを知らない傾向がみられます。言葉は悪いかもしれませんが、そのような多額の財産を相続しながら警戒心のない人たちは、不誠実な業者らの目には、まさに「鴨が葱をしょってくる」ように見えるのでしょう。
そうした業者のターゲットになってしまうと、最悪の場合、相続した財産をすべて失うことにもなりかねません。
たとえば、古い事例ですが、2012年7月6日付の西日本新聞では、弁護士が、相続に関する相談を受けた福岡県内の資産家の女性に対し貸金業者を紹介して高金利の借り入れをさせたり、女性の土地を第三者名義に変更する契約を結ばせたりするなどして、女性の相続した現金約1億6000万円と評価額5億円以上の土地のほとんどを失わせていた事実が発覚したことを伝えています。
この弁護士は、他にも詐欺事件を引き起こして起訴されていました。貸金業者は1億円を貸し付けて、女性から8000万円の利子を得ていました。おそらく、貸金業者は弁護士と共謀して、女性をはじめからだましてその金額を奪うつもりだったのでしょう。
このような被害にあわないために、以下では、相続がおこったときに、用心しておきたい業者や、その手口について確認しておきましょう。