本記事は株式会社財産ドック著『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再構成したものです。最新の法令・税制等には対応していない場合がございますので、予めご了承ください。

「1人で全部受け取れば?」に長男の答えは…

すると、長男は「すべてを貰うのは困る」と答えます。話を聞くと、相続できょうだいと長年揉めている知人がいるらしく、そのようなことにはなりたくないから、皆で納得するような分割にしたいとかねてから望んでいたというのです。

 

今回の場合は長男の意志が大きなきっかけになりましたが、キーパーソンの意志を聞き出せると、一体感が生まれてみんなでうまく分割できる方法を考えていこうという空気ができてきます。分割の割合では、父の面倒を見ていたのだから長男に多くするという前提条件も、皆不満を言わず納得してくれました。

 

解決策2 複数のシミュレーションを提示し、〝落としどころ〟を作る

 

話し合いのスタンスや場が整ってきたところで、問題の土地の分割方法について話し合いを進めます。こちらからは複数のシミュレーションを提示しました。数が多かったこともあって分割案は10を超えています。作成にも時間はかかりましたが、確認する方も大変だったことでしょう。

 

そのシミュレーションした資料の中では、4人それぞれが相続する土地の住所、地目、現況、価格、貸地であれば月額の地代収入、固定資産税もひと目でわかるように記載しています。

 

価格は、固定資産税評価額、路線価、公示価格(更地として考えた場合の価格)などいくつかの種類で算出し、4人がどのような土地をどのような価格で、どの程度の按分割合で受け取るかをわかりやすく明記しておきました。すべてをはっきりリスト化しておいたのは、あとから難癖をつけるということをなくすためでもあります。

 

6回を超える全員での打ち合わせの中で、最終的に[図表]のような按分割合で分割を決定することができました。土地評価としての割合はやや長男が多い程度でしたが、地代収入に関しては長男が半分以上の割合を占めるような分割案でした。

 

[図表]Aさんに提示した分割方法のシミュレーション(イメージ)

 

地代収入が高い貸地が長男に集まったのは、その貸地が単年契約であることや、借地人の契約や管理に手間がかかるといった理由がありました。また、長男本人としても、なるべく多くの父の仕事を引き継ぎたいという意志もあったためです。

次ページ長男以外を納得させる「ある隠し玉」があった!
税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

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幻冬舎メディアコンサルティング

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