やっぱり「不和」はあった。長男が責められたワケ
しかし、このような第三者からの働きかけは往々にして良い結果を招きません。相続をコーディネートする立場の人が、早々に第三者の存在を排除していかないといけません。約束を取り付けた後、きょうだいで遺産分割についての話を進める段階に入っていきます。
初めは本人たちだけで話し合う様子を見守っていました。すると、きょうだい間の関係性が見えてきます。
唯一母の違う長男が、他の3人から責められるような、不利な立場だったのです。父の敷地で暮らしていたことや、一軒家を建てるときに父から受け取った援助金のことを持ち出され、3対1と不利な構図になっていました。
異母きょうだいがいるというのも、相続では揉めやすいパターンの一つです。そもそも普通のきょうだいでさえ相続では揉めることが多いのに、異母きょうだいであれば余計に考え方も立場も異なってきますので、意思の疎通が難しくなります。
ちなみに、最も厄介なのは相続発生後に隠し子がいたと判明したときです。隠し子の存在を知らされていない場合、突如として現れたことによる相続人の心理的なショックは非常に大きいものです。さらには隠し子から「私にも遺産をもらう権利がある」と主張されるような事態になれば、その影響は大きなものになります。
それに比べれば、Aさんのケースでは既に皆が異母きょうだいの存在を知っていましたし、長い付き合いでもあることが、まだ冷静に話し合える土壌を作っていたとも思います。
いろいろと指摘される中でも長男は変に卑屈にはならず、他のきょうだいに「学費や結婚費用などの援助をしてもらっていただろう」と反論することができていました。
きょうだい間の話し合いが煮詰まってきたところで、あえて長男に「すべての財産を1人で受け取るというのはどうでしょうか?」と提案しました。親であるAさんの面倒を一番見ていたのは長男だったこともあり、そんな長男が一体どうしたいのか、どう考えているのかを、しっかり聞き出して皆に共有するためでした。