夫が45歳で死亡…義母が「途方に暮れた」妻の財産ひとりじめ

本記事は駒起今世税理士著『相続大増税の真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再構成したものです。最新の法令・税制等には対応していない場合がございますので、予めご了承ください。

相続税対策の落とし穴

相続税対策には、大きな落とし穴があります。その最大の目的が文字通りの節税になると、テクニックに走ってしまうのです。結果として、手持ちの生活資金や老後資金を食いつぶしてしまうだけでなく、相続税対策のために手に入れた資産までも処分する羽目に陥りかねません。

 

その代表例が不動産投資でしょう。たとえば土地を所有している人の場合、更地にして遊ばせておくよりも、その土地の上に賃貸物件を建てたほうが相続税の評価額が下がり、節税効果が高くなります。そのために土地を担保にするなどして借入れを行い、不動産投資に足を踏み入れる人もいます。

 

そういう人場合、おそらく家賃収入で借入金を返済する計画を立てるはずです。ところが、空室が多くなるなどして、当初、予定としていた家賃収入を得られなくなれば、借入金の返済が大きな負担になっていきます。その結果、わざわざ借金をして賃貸物件を建てたにもかかわらず、資金繰りが回らなくなり、最終的には物件を売り払う必要まで生じる可能性もあるのです。そうなると、節税で得るはずだった利益より、よほど高くつくことになるでしょう。

 

長い目で考えると、節税にはリスクが伴います。相続人に万が一の事態が起きる可能性もあれば、節税自体も頻繁に変わるからです。結果として、「相続で失敗するくらいなら、相続税を払って何もしない」という選択肢が一番賢明だったという場合もあります。

 

会社の経営では、将来のビジョンを具体的に展望するために「中長期経営計画」というのを作成します。同じように、相続対策とは、それぞれの家庭の長期を見据えた「家計事業計画」なのです。その計画には、資産配分や運営戦略がなければなりません。資産の内容と量をはかりながら、「何が我が家にとって最適なのだろう」と考えてみてください。

 

もちろんその前提として、あなたにとっての幸せとは何か、家族にとっての幸せや絆とは何かについて思いを馳せてみてください。そのうえで、あなたが考える幸せと絆を確保するために必要な財産は何なのか、さらにその財産がどの程度あればいいのか……そのような大局的な視点に立って、相続について考えてもらいたいのです。

 

相続対策で失敗する人の多くは、目的をはき違えています。相続対策の一番の目的を節税としてしまうと、いわゆる税テクに走り、失敗します。そうではなく、あなたにとっての、そして家族にとっての幸せとは何なのか、その目的を達成するための相続対策でなければなりません。

相続税を払ったほうが幸せな場合がある!?

その意味では、相続税とはみんなが幸せになるための必要経費と考えることもできそうです。目的を見失い、テクニックを駆使して失敗するのであれば、目的の達成に向かって払うべきものは払う、そのほうが最終的に幸せという考え方もできるでしょう。

 

相続税を払ったほうが幸せな場合もある……これは税理士が言うべきではないかもしれません。しかし、相続問題を数多く経験してきた私たちは、節税を目的にさまざまな対策を講じた結果、親子や兄弟間の醜い争いに発展するなどの不幸を数多く目の当たりにしてきました。相続対策の最終的な目的が個人や家族の幸せのためであるならば、家族それぞれの事情を踏まえたうえで、節税に捉われず、最適な方法を選択すればいいと思うのです。

 

「税金を払えるのは幸せである」……。

 

このように、ものの見方を変えてみるのも一つの方法です。相続税を払うとその一族の財産はたしかに減りますが、日本全体でみるとなくなっているわけではありません。

 

その意味で、財産の一部を寄付するなどの使い道があってもいいのではないでしょうか。日本は寄付の全額が所得から控除されないため、寄付文化が根づかないといわれてきました。国民の財産が社会に還元されるように、寄付に関する税制の見直しが検討されればいいと思うのですが、いかがでしょうか。

 

日本は戦後の焼け野原から立ち上がり、世界を代表する経済大国になりました。国民一人ひとりが持つ財産を、自分のミッションに照らし合わせて使っていこうと言う風土をつくるのが、今後の日本の発展につながると思っています。そう考えると、相続税は日本の将来への投資と捉えることもできるかもしれません。

 

とはいえ私たちは税理士なので、要望に応じて、相続税を減らしたり、場合によってはゼロにすることも可能です。その場合、節税をすることが、個人や家族の幸せに直結する方向で実を結ぶのが一番望ましいと思うのです。

税テクに成功し、家族の絆が失われた事例

ではここで、節税に成功し、相続に失敗した事例を紹介しましょう。税テクに力を入れるあまり、家族の絆が失われてしまったのです。

 

Dさんは両親と同居し、妻と子ども2人の幸せな家庭を築いていました。Dさんには姉が1人いますが、結婚後、夫の仕事の関係でアメリカに住んでいます。Dさんの実家は地方ということもあり、家を継ぐのは長男であるDさんという共通の認識がありました。

 

そうしたなかでDさんの父親が相続対策を考え始め、とりわけ節税に力を入れることになりました。当時はバブル真っ只中で財産額が多く、いかに相続税を減らすかという観点で税理士に相談し、計画を立てたのです。

 

その結果、父親の財産を、息子であるDさんを飛び越えて孫に相続させる方法を考えました。通常の相続では、まず父親の財産が配偶者である母親、そしてDさんを始めとした相続人に渡ることになります。これを一次相続といい、その時点でまず相続税がかかります。そこから時代を経て、次に母親の財産がDさんを含めた相続人に渡る時期がやってきます。これを二次相続といい、この時点でもまだ相続税がかかります。

 

しかし、今回の計画のように、父親の財産を孫に相続させれば、相続を2回分、パスできるのです。孫に相続させる場合は20%余分に相続税がかかりますが、3回の相続が1回で済むため、トータルで考えると大幅な節税効果が期待できます。ちなみに、Dさんの父親が2人の孫と養子縁組すれば、財産を一代飛ばして相続できます。

 

今回の場合、その養子縁組のテクニックも同時に使うことになりました。こうして準備を整えたうえで、やがてDさんの父親が亡くなり、計画通りに一代飛ばして2人の孫に財産を渡すことができたのです。相続税対策としては落ち度がなく、大きな節税効果を得ることができました。

 

ところがその後、状況が一変します。Dさんの妻と義母の仲が悪くなってしまったのです。いわゆる嫁姑の関係の悪化です。最終的にDさん家族は実家を飛び出し、賃貸マンションに引っ越すことになりました。

 

Dさん家族は実家を飛び出した。
Dさん家族は実家を飛び出した。

 

その後、さらに不測の事態が起こります。なんとDさんが45歳という若さで亡くなってしまったのです。

 

これが何を意味するかわかるでしょうか。

 

Dさんの父親の財産は孫(Dさんの子ども2人)が相続しているため、Dさんの妻と子ども2人の財産になってしまったのです。しかもDさんの妻と義母は仲が悪く、その後の関係は途切れていました。結果、Dさんの母親には財産が残らず、途方に暮れることになったのです。

 

このケースは税テクに成功し、相続に失敗した典型例といえるでしょう。節税に力を入れるあまり、肝心の家族の幸せが置き去りにされてしまっては元も子もありません。長い人生、その先に何があるかわかりません。中長期の節税はリスクを伴う。その可能性を理解したうえで相続対策を考えてほしいと思います。

 

 

駒起 今世

税理士

JMC事業承継マネジメントコンサルタンツ 

豊富な経験と誠意をもって相続に悩む人たちと真摯に向き合い、個人や企業の存続とさらなる発展を目指し、日々邁進している。

著者紹介

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幻冬舎メディアコンサルティング

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