本記事は株式会社財産ドック著『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再構成したものです。最新の法令・税制等には対応していない場合がございますので、予めご了承ください。

「子らが揉めることはないだろう」は大間違いだった

当時、既に90歳のAさんとのコミュニケーションは、もっぱら対面での会話です。Aさん宅の縁側が、風情があって居心地がよいこともあり、仕事とは関係のない他愛もない話をすることもしばしばでした。そんなAさんだったこともあり、相続の相談はごく自然な流れで始まりました。

 

Aさんは奥さんを既に2人亡くしているため、推定される相続人は、前妻の子1人、後妻の子3人です。相続対策として信託銀行で遺言書を作ってあり、法定相続分で遺産分割してもらおうと決めているとのことでした。

 

遺産分割の詳細は決められていませんでしたし、4人の子どもたちには親であるAさんの資産の全容や遺言書の内容について明かしていないとのことでした。Aさん自身は、相続で自分の子らが揉めることはないだろうという確信を持っていたからです。

 

実はAさんはもともと不動産関係の仕事をしていたこともあり、数字に強く、多くの土地を含めて15億円を超える資産を持つ中で、子に課される予定の3億円あまりの相続税を自分で算出し、その納税資金についても、現預金でしっかり確保していたのです。その準備が争いを防ぐだろうという一つの根拠になっていたのでしょう。

 

しかし、Aさんの資産状況や相続人のことを考えれば、このまま相続が発生すると、高い確率で問題が起こってしまうことは明らかでした。

 

問題点1 土地が多い

 

Aさんの場合、土地に対する相続対策が不十分でした。現預金で納税資金が確保されていたので、相続税対策や納税資金対策について大きな心配はいらなかったものの、土地の遺産分割で争う危険性があったのです。

 

相続において土地などの不動産はトラブルの火種です。土地の数が多ければ、誰がどう分割するかの話し合いで炎上してしまうことが考えられます。

 

なぜ土地の分割がうまくいかないのか、それは一つとして同じ土地というものがないからです。Aさんの場合には、自宅敷地や更地、貸地を含めて20筆もの土地を所有していました。4人で分割しようとして「5筆ずつにしましょう」と単純に分けて平等になれば問題ありませんが、なかなかそうはいきません。

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税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

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