「顧客の損失なんて知ったこっちゃない」が生き残る
大阪大学出身で当初は本社勤務だったエリートも、バブル崩壊に伴い私のいる支店へ移ってきましたが、1年で辞めてしまいました。またある先輩はまったくノルマが達成できず、席を倉庫に追いやられる仕打ちまで受けていました。しかしそこまでやられても会社を辞めることなく、今も会社にしがみついているという話を耳にしたことがあります。
証券会社の営業は過酷さを極め、同期の半分はだいたい3年以内に辞めていくのが常でした。なかにはトップセールスで優秀過ぎるため辞めていく人もいました。超大手投資銀行に転職し数年でサラリーマンの生涯賃金を稼ぎ、長年の夢だった飲食店を開く、そんな生き方を選んだ人もいます。
■生き残るための必須スキル
営業成績不振や上司による過剰な圧力だけでなく、証券会社の雰囲気になじめないで辞めていく人もいました。
いわゆる体育会系のノリが極めて濃い社風なので、文化系で内向的なタイプ、事務的な作業が得意な人は付いていけず、ほぼ例外なく辞めていったと記憶しています。証券会社は金融商品を販売し手数料で稼ぐ商売です。とにかく抱えている顧客に商品を継続的に買ってもらう必要があり、営業力は欠かせません。体力勝負ですし、精神面での図太さも欠かせないでしょう。
会社の売上貢献のためには、顧客がたとえ損を出してしまっていても、平気な顔で売り込むくらいの度胸が必要です。実際、顧客の資産など知ったことか、という厚顔無恥なスタンスで営業に打ち込む課員もいました。そのような販売方法に同調できず、良心をいため、嫌気がさして辞めていく人もあとを絶たなかったのです。証券会社で生き残るためには、顧客に損失を出させてしまっても、時に怒らせてしまっても、気にも留めないくらいの鋼のメンタルが必要でした。
■金融界の栄枯盛衰~証券会社の信用度が一気に落ちた
山一證券の破綻最初に赴任した支店に5年勤務した私は主任へと昇進、東京の郊外の支店へ転勤となりました。