コロナ拡大第2波が懸念される現在。活動自粛を再び要請されるのではないかと、戦々恐々としている人も多いことだろう。「企業の在り方」そのものが変革している今こそ、自身の携わるビジネスの根幹を見直してみよう。本記事では、株式会社ビジネス・ブレークスルー執行役員・高松康平氏の書籍『筋の良い仮説を生む 問題解決の「地図」と「武器」』(朝日新聞出版)より一部を抜粋し、解説する。

「現状理解をしたがらない人間」の原理は単純で…

◆先にWHY、HOWに進みたがるのが人間の癖。でも、先にWHEREから!

 

まずは、どこで問題が起きているのか確認する。ここから問題解決は始まります。しかし、人間の特徴として、どうしても現状理解(WHERE)よりも、次のステップである本質的課題発見(WHY)や解決策立案(HOW)に進みたくなる傾向があります。

 

私が講師を務める研修では、受講生自身の仕事の問題解決に取り組んでもらい、レポートを添削させていただくことがあります。そのレポートの質を大きく左右するのが、WHEREの部分なのです。

 

この部分にしっかりと取り組むことができれば、全体としてのレポートの質が格段と上がってきます。その一方で、WHEREの部分で躓いてしまうと、その後のプロセスでいくら頑張ったとしても挽回が難しくなります。この差はかなり大きいものです。

 

でも、なぜ人間はWHEREから進めるのが苦手なのでしょうか。その理由を、私は、現状理解というプロセスが楽しくないからだと思っています。現状理解は、地味な作業であるため、脳が楽しいと感じません。だからこの作業を飛ばしてしまいたくなるのです。

 

この現状分析は、「健康診断」に似ています。健康診断が必要だということは誰でも疑わない事実だと思います。でも、健康診断は決して楽しい作業だとは言えません。健康診断の日は、少し面倒だと感じます。しかし、しっかりと健康診断を受けておかないと、あとあと大変なことになってしまいます。そういう正論は知っていても、なかなか健康診断に行かない人がいます。それは、面倒くさいからです。それと同じことが問題解決にも当てはまります。

 

問題解決の最初のステップである現状分析は地味な作業でつまらない。でも、ちゃんと健康診断をしないで、処方箋を出しても効果がないように、現状分析をせずに解決策を考えても効果が少ないのです。

 

会社員の場合、健康診断は強制されるので皆さんは受けると思いますが、問題解決においては現状分析をするように強制されることはありません。強制されないからこそ、自分自身で意識して取り組まないといけません。

 

しかし、いくら現状分析の必要性をお伝えしても、どうしても次のプロセスに進みたくなってしまうから厄介なのです。それは、WHEREの次のプロセスであるWHYやHOWのプロセスのほうが楽しいからです。

 

原因分析のプロセスで「こういうことが原因ではないか」とWHYを追及しているほうが思考を拡げることができますし、さらにHOWになると「こんなことができたらいいのに」と楽しく考えることができます。だから、人間は先にWHYやHOWに飛びつきたくなるのです。

 

でも、人間の脳の癖自体を変えることはできません。人間の脳の特徴を変えて、現状分析という地味なプロセスを楽しいと感じるようにしましょう、なんてことは言えないわけです。現状分析は地味な作業であって、やらなければならないと理性で理解するしかありません。人間の脳の癖を理解して、問題解決に取り組めばよいのです。

 

【次回に続く】

 

高松 康平

株式会社ビジネス・ブレークスルー執行役員/問題解決力トレーニングプログラム講座責任者/ビジネス・ブレークスルー大学専任講師

 

筋の良い仮説を生む 問題解決の「地図」と「武器」

筋の良い仮説を生む 問題解決の「地図」と「武器」

高松 康平

朝日新聞出版

マッキンゼーで世界最高峰の「考える力」を身につけ、ビジネス・ブレークスルーで「問題解決力トレーニング」を教える著者が、経験がなくても、筋のよい仮説をつくり、問題を解決していくステップと「7つの武器」を伝授。

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