新型コロナウイルスの感染拡大で日本人の働き方が大きく変わった。東京都の外出自粛要請に始まり、政府の緊急事態宣言が出され、多くの企業でオフィスワークを在宅勤務に切り替えるなど対応に追われた。出版業界も例外ではない。出版社もリモートワークが始まり、新しい働き方が模索されている。通勤するサラリーマンが減ったため、都心部の大型書店は休業を余儀なくされた。出版業界も撃沈かと思われたが、実はいろいろなことが起こっていた。新型コロナ禍の下での出版事情をレポートする。

『アメリカの壁』はトランプ大統領出現の預言の書?

もう一つ気になるのか、預言者・小松左京の側面である。『復活の日』は半世紀後のコロナ禍を予見したようなストーリーだ。『日本沈没』での大規模な地殻変動に関する描写は、1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災に符合するといわれる。ほかにもいくつか、預言の書があってもおかしくない。

 

「1977年に書いた『アメリカの壁』は、国境に巨大な壁を築いてまで不法侵入者を排除したトランプ大統領をほうふつさせると話題になりました。1967年の『極冠作戦』は、極端な温暖化で両極の氷が溶け、人類の居住可能地域の大半が水没してしまう話。半世紀以上前に危機的温暖化に警鐘を鳴らした作品は珍しかったのでは。インターネットなどの言葉もない時代に、極端に進化したネット社会を克明に描写し、その思わぬ脆弱性を指摘した『継ぐのは誰か?』(1968年)という作品もあります」

 

まさに預言者そのものではないか──。何が起きるかわからないコロナ後の世界、だから小松左京から目が離せない。最後にとっておきの質問をぶつけてみた。


「今、小松先生がご存命ならどんな提言・活動をされると思いますか?」と。

 

「本当に元気だったころなら、パンデミックの現状をさまざまな角度から取材し、専門家でないことを逆手にとり、SF作家として俯瞰的な分析と大胆な提言をしたのではないかと思います。また、現在への提言だけでなく、未来へ教訓を残すため、貴重な記録を残すよう広く呼びかけもしたと思います」

 

コロナ関連特需が収束しても、小松左京本のオーバーシュート(感染爆発)は必至だ。リバイバル第2弾の『首都消失』はすでに重版がかかったという。

 

(文中一部敬称略)


平尾俊郎

フリーライター

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