「しつけがなっていない」という周囲の冷たい視線
発達障害の子どもを育てるお母さんの苦労は計り知れません。子どもが電車の中で走りだしてしまえば追いかけたり、図書館で騒ぎだせばなだめたり。これまでに何回注意しても一向に効果がないのでと、疲れ切ってなすがままにさせておけば、「あのお母さんは子どものしつけがなっていない」と、周囲の冷たい視線にさらされます。
本来なら、逆に社会がお母さんをフォローしてあげるべきです。子どもが電車内で多少走り回っても、温かい目で見守ってくれる社会であれば、お母さんはずいぶん救われるはずです。
近年、発達障害の存在については多くの人に知られるようになりました。発達障害がどのようなものかという知識を持っている人も増えています。しかし、そこから一歩進んで、発達障害の子どもを育てているお母さんの大変さに、思いをはせるべき段階に、私たちは来ているのではないでしょうか。
子育ては、どうしてもお母さん中心になりがちです。世のお父さんはお母さんの大変さを受け止め、フォローすることを欠かさないようにしましょう。
動物園のライオンの雄は、子育てを一切手伝わないのだそうです。しかし、雌ライオンが雄ライオンに八つ当たりをして育児のストレスを解消するから、育児ノイローゼにならないのだとか。
人間の場合も、父親が母親の子育てに関する悩みを聞いたり、つらさを受け止めたりすることができれば、より円滑に子育てができるでしょう。もともと、人類は群れで子育てをする生き物でした。そのため、母親がひとりで子育てをするのには無理があります。だからといって、急に核家族が大家族に戻れるわけでもありません。
現代の子育ての新しい形として、自治体の子育て支援や、民間の幼児教室を活用するのは良い方法だといえます。血縁はなくとも、信頼関係で結ばれた先生たちと連携しながら子育てができれば、お母さんも楽になりますし、子どもたちも適切な時期に適切な刺激を受けることができ、一石二鳥です。
【WEBセミナー 開催】
数ヵ月待ちが当たり前?
社会問題化する「初診待機問題」を解決する
「発達支援教室」×「児童精神科クリニック」
幼児教室であれば、先生とは毎週決まった時間に顔を合わせます。幼児教室の先生は、幼児教育のプロとして専門知識を持ち、子どもの特性を理解してサポートしてくれる存在です。発達障害の子どもを抱えているお母さんの場合、ママ友とは育児の悩みを共有できない場合もあるでしょう。幼児教室の先生は、ママ友には相談できない子育ての悩みも聞いてもらえる心強い存在でもあります。気がつけば、子どもを介して親戚同士のような存在になっていることもあります。これは「疑似大家族」とでもいえる関係かもしれません。
発達障害の子どもを育てていくうえで、社会の理解と寛容さ、そして適切なサポートがあれば、お母さんの心理的な負担はずいぶん軽くなるはずです。発達障害の子どもだけでなく、その子を育てるお母さんのことも温かく見守れる社会でありたいものです。
大坪 信之
株式会社コペル 代表取締役