日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、遺言書にまつわる、ある兄弟間の相続トラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

解説:遺言書の偽装を防ぐなら「公正証書遺言」を

自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付、氏名を自書して押印しなければ認められません。また遺言書を偽造・変造すると、民法と刑法の両方からペナルティーが科されます。

 

事例のようなことが起きないよう、遺言書は公正証書遺言を作成することをおすすめします。

 

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作ってくれる遺言書です。公証人とは、裁判官や検事を過去にしていた方が多く、いえば法律のプロ中のプロです。そのような公証人が作ってくれる遺言書なので、安全性と確実性が非常に高い遺言書といえます。

 

公正証書遺言の最大のメリットは2つあります。ひとつは、偽造変造のリスクが一切ないこと。公証人が遺言を作るので、悪意のある相続人に書き換えられたり、勝手に破棄されてしまうリスクは一切でてきません。2つ目は、公正証書遺言は、公証役場で預かってもらえること。自筆証書の場合には、遺言書を紛失してしまうケースが非常によく起こりますが、公正証書遺言であれば、そのようなリスクはありません。

 

ちなみに「亡くなった母が遺言書を残しているのかわからないのですが、調べる方法はありますか?」というように、亡くなった人が生前中に、遺言書を作ったことを家族に伝えていないケースも存在します。この場合、自筆証書遺言であれば、運よく家族が見つけてくれなければ永久に見つかりません。その場合には、遺言書はないものとして取り扱われてしまいます。

 

しかし、公正証書遺言の場合には、公証役場にいくと「遺言検索システム」というシステムがあります。このシステムを使えば、亡くなった人が生前中に公正証書遺言を作っていたかどうかがすぐにわかります。亡くなった人の戸籍謄本と、その人の相続人であることが確認できる書類(相続人の現在の戸籍謄本)と、本人確認書類(免許書など)があれば、どこの公証役場でもシステムを使うことができます。

 

なお、このシステムは存命の人に対しては使えません。たとえば母が健在のうちから「うちの母が、私にとって不利な遺言を作ってるんじゃあるまいか、調べることはできないかしら?」というような人が、遺言の有無を公証役場にきくことはできないということです。

 

【動画/筆者が7月から始まる「遺言書の保管サービス」について解説

 

橘慶太
円満相続税理士法人

 

 

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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