日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、遺言書にまつわる、ある兄弟間の相続トラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

病床の父が「うちには大金がある」と突然の告白

「弟がまさかあんなことをするとは……」

 

先日起きたばかりのできごとを振り返り、そう呟いたAさん。2人兄弟の長男であり、弟は2歳年下です。小さいころは近所でも評判な仲良し兄弟でした。

 

「人見知りで、よく私の後ろに隠れているような奴だったんですけどね」

 

そんな2人の関係に変化が生じたのは、父が病に倒れ、余命宣告を受けたときだったといいます。Aさんの父は、いわゆる普通の会社員。それまでお酒もタバコもギャンブルもやらず、平凡を地で行くような人でした。

 

そんな父が病床で「相続について話をしておきたい」と言いました。

 

「話を聞いたときには『はぁ!?』と思いましたよ。相続なんて、金持ちだけの話かと思っていたんで」

 

かれこれ十数年前、祖父が亡くなり相続が発生したときのこと。遺産は不動産(=実家)と現金がありましたが、実家に住んでいた伯父家族がそのまま家を継ぐことになり、現金のほとんどを父が手にすることになったというのです。その額は……なんと8,000万円。すでに母は亡くなっていたので、相続人は兄弟2人。時期が来たら兄弟で二等分するようにと、父は伝えたのです。

 

「そんな大金を持っていたなんてな」

 

病室を出た兄弟は、突然の父の告白に驚きながらも、どこか興奮をおさえきれない様子でした。不謹慎かもしれませんが、父が長くないことは確実。相続が発生すれば、兄弟で二等分、4,000万円を手にできるというのですから仕方がないかもしれません。

 

「私も、突然大金の話をされて舞い上がっていました。あのとき、もう少し弟の様子に気を止めていたら、こんなことは起きなかったかもしれません」

 

そのときは、父の相続が発生したときに起きました。

 

 

次ページ父からの遺言書…聞いていた内容と180度違う

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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