親の家に押しかけ同居の兄「不動産は全部もらう」に妹は唖然

近年では相続税の課税はますます重く、また、これまで許容されていた対策にも規制がかかるなど、非常に厳しいものとなっています。大切な資産を減らすことなく無事に相続を乗り切るには、どのような手段があるのでしょうか。「相続実務士」のもとに寄せられた相談実例をもとにプロフェッショナルが解説します。※本記事は株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

家族を残して老親と同居開始した兄、困惑する妹

●所有マンションに家族を残し、兄だけ実家で両親と同居

 

50代の女性のBさんは、80代の父親の相続が不安で、筆者のところへ相談に来られました。母親も健在であり、50代の兄もいます。

 

兄家族は両親と同居せず、マンションを買って家族で生活をしてきましたが、なぜか6年前、兄は両親が住む実家に戻ってきました。兄のマンションには妻と子が住んでいるのに「両親の世話をする」といって、自分だけ同居をはじめたというのです。兄嫁は両親の面倒を看る気もないようで、まったく来ようともしません。

 

 

父親は、自宅のほかにアパートも所有しています。実家から徒歩圏で駅から近く、築15年経っているものの、現在も満室で稼働しています。

 

●父親が「不動産は兄へ」との念書を書いた…本当に?

 

ほどなく、両親と同居する兄から「相続時には、自分が家とアパートをもらう。Bさんは現金で」といってきたそうです。

 

用意周到な性格の兄は「父からは〈2つの不動産は兄に相続させる〉という念書を書いてもらっている」ともBさんに伝えてきました。

 

しかしBさんは、兄が同居する前からずっと両親のサボートのために実家に通っています。6年前に実家へ戻ってきたからと、わが物顔をする兄に対し、釈然としない思いが湧いてきます。

 

●「兄が財産を隠すのではないか」という疑念も

 

Bさんが相談に来られた主な目的は、不動産と現金の割合を知りたいということでした。計算してみると、財産の75%が不動産、現金は25%だということがわかりました。

 

いまですら現金は25%で、これから介護などがはじまると、現金がどんどん減ってしまうかもしれません。しかもアパートからは家賃が入りますので、さらに不公平感が出ます。

 

兄より前から実家に通って両親の面倒を看てきたBさんは、納得できないといいます。

 

兄は同居することを強みとして、両親が預金通帳を預かってしまっているそうです。兄の性格上、細かいことを報告してくれなかったり、事後報告だったりすることもあるため、Bさんは「兄が財産を隠すのではないか」というさらなる不安が募り、どうしても信用できません。

 

●もめないための遺言書は必須

 

Bさんにすれば、兄が同居して両親のサポートをしてくれるのなら、半分ではなく、兄が多くなっても一向にかまわないのですが、いずれにしろ、資産のすべてを明らかにしてもらうことが条件です。

 

しかし、このままでは兄妹でもめそうです。そのため筆者からは、いまのうちに父親に遺言書を作ってもらうことが必須であるとアドバイスしました。

 

財産を等分にするなら不動産は1つずつ、が妥当なところです。しかし、収益があるアパートも欲しいとなればバランスが取れません。Bさんは早々に家族で話し合ってみると帰られました。ぴったり半分にはできないにしてもほどよいバランスが必要だと言えます。

 

 相続実務士のアドバイス 

 

兄は同居して親の面倒を看ているという認識で、不動産をもらいたい気持ちが根強いようです。ただし、法的にはきょうだいは等分、平等相続が原則です。最終的には父親の意思で決着することになると思われますが、まずは家族の話し合いが望ましいといえます。

同居として認定されなかった「長年の泊まり込み介護」

●隣の家に暮らす高齢母を、長年泊まり込んで介護してきた長姉夫婦

 

60代のMさんは3姉妹の長女です。90代の母親が亡くなり、相談に来られました。父親はすでに亡くなり、嫁いで他県で暮らしている2人の妹がいます。したがって、相続人はMさんと2人の妹の計3人になります。

 

母親の財産は自宅の土地8000万円、建物100万円で財産の8割にあたります。残る現金は約2000万円でした。

 

 

Mさんには夫と2人の息子があり、母親の家の隣に夫名義の家を建てて住んできました。Mさんも結婚当初は実家から離れて生活していましたが、子どもが生まれたとき、父親から隣に家を建てたらどうかとの提案があり、そのようにしたのでした。

 

●母が不安なく暮らせたのは姉夫婦のおかげ…妹たちも遺産分割に理解

 

父親が15年前に亡くなり、母親はひとり暮らしになりましたが、すぐ隣にMさん家族の家があり、行き来できますので、何の不安もない生活だったそうです。母親が90代になり、いよいよ1人暮らしが大変になったころは、Mさんや夫が泊まり込んで母親の介護をしてきました。そのため、母親は最後まで住み慣れた自宅で生活できたのです。

 

母親は、父親が亡くなったときに自宅を相続しています。配偶者の特例を生かして相続税がかからないというメリットがありますので、それを生かすことにしました。

 

また母親は、隣りに住むMさん夫婦がずっと面倒を看てくれたことに感謝していて、公正証書の遺言書を作成してくれました。自宅はMさんに、現金は2人の妹で分けるように、という内容です。

 

Mさんと妹たちとの関係は円満で、普段からMさん夫婦がよく面倒を看ていることを理解しており、遺言書のとおりで不服はないといっています。

 

あああ
ずっと泊まり込んで母親の介護を…。

 

●長年にわたる泊まり込み介護は「同居」か?

 

問題は相続税です。同居していれば小規模宅地等の特例が使えるので自宅土地は20%、1600万円の評価にでき、ほかの財産と合わせて3700万円となり、相続税はゼロとなります。

 

しかし「隣の家に住んで泊まり込むこと=同居」とみなされるのかがいまひとつわからないため、念のため筆者のところに相談に来られたのでした。

 

●税務上は、同じ建物に住んでいないと同居とはみなされない

 

Mさん夫婦としては、「泊まり込んで介護=同居」だという認識ですが、税務的には同じ建物に住んでいないと同居とはみなされません。しかも隣の建物はMさんの夫名義で、お母さんの建物ではないのです。

 

こうした場合、小規模宅地等の特例は適用できず、相続税を支払うことになります。相続税は645万円、全体の8割を相続するMさんは516万円の相続税を払わなければなりません。

 

●生前であれば対処法があったのに…

 

Mさんの場合、夫の家を子どもに贈与してしまい、夫婦でお母さんの家に同居してしまえば、何ら問題はなく小規模宅地等の特例が使えました。計画的に節税しようとするなら、生前の準備が必要だったのです。

 

Mさんご夫婦は泊まり込みで介護しているので、てっきり同居が認められると思っていたと非常に残念がっておられましたが、いまから事実は変えられません。筆者からは、Mさんのときの対策をいまから取るように提案し、相談を終えました。

 

 相続実務士のアドバイス 

 

自分たちの思い込みで判断して節税のチャンスを逃してしまうのは残念です。なるべく早いうちに家族で相続対策のプランを立てるようにすれば、節税も可能になり、もめる要素も減らせます。専門家への相談も選択肢です。
 

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 
相続対策専門士

京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。著書50冊累計38万部、TV・ラジオ102回、新聞・雑誌420回、セミナー500回を数える。近著に『いちばんわかりやすい 相続・贈与の本'18~'19年版』(成美堂出版)、『増補改訂版 図説 大切な人が亡くなったあとの届け出・手続き』(宝島社)ほか多数。

著者紹介

連載相続実務士発!みんなが悩んでいる「相続問題」の実例

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