新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

池袋は再開発事業でイメージ一新できるか

この状況の背景には、人が集まるはずの街である池袋周辺のマンションの多くが投資用の狭小ワンルームマンションばかりで、ファミリーが住めない、単身者が結婚をすると池袋周辺には適当な部屋がないので区外に脱出してしまうといった悪循環の存在が指摘された。

 

豊島区では2004年に狭小住戸共同住宅税を導入して、マンションで戸当たり面積30㎡未満の住戸を作る場合には、戸当たり50万円を徴収することにした。しかしこれだけでは効果は少なく、2014年には一定規模以上のマンションの新築にあたって、住戸面積は最低でも25㎡以上とすることを条例で定め、事実上ワンルームマンションを作らせない措置に踏み切った。

 

しかし、すでに建ってしまっているワンルームマンションに集まったのが外国人、国籍の多くは中国人だ。池袋周辺のワンルームマンションは、平成バブル期にサラリーマンなどの節税用投資マンションとして販売されたものが多い。初めのうちは学生や若いサラリーマン層が入居していたが、建物の老朽化や競合の激化を背景に次第に競争力を失い、賃料も5万円から6万円程度に落ち込み、その部屋に外国人が好んで住むようになったのだ。2018年における豊島区の新成人のうち外国人が占める割合は38%にも達し、駅北口には中華料理店が林立、怪しげな風俗店も軒を連ねるチャイナタウンとなっている。

 

渋谷、新宿になりきれない池袋の苦悩。
渋谷、新宿になりきれない池袋の苦悩。

だが、こうした池袋の負のイメージを払拭しようと、官民挙げての再開発事業が続々立ち上がっている。まずは「官」である豊島区。2016年4月南池袋にあった公園を全面リニューアル。広大な芝生広場が誕生。さらにRACINES(ラシーヌ)というお洒落カフェがオープン、人々の憩いの場を演出。これまでの暗くて汚い公園のイメージを一新した。

 

 

さらには2019年11月16日、池袋西口公園がリニューアルオープン。池袋西口公園といえば、1990年代終わりから2010年頃にかけてベストセラーになった石田衣良の小説『池袋ウエストゲートパーク』シリーズの舞台。ナンパの聖地というありがたくない名前を持った公園が、屋外シアターを備えた劇場公園にその姿を変えた。公園には直径35mの「グローバルリング」と呼ばれるリングゲートが設置され、豊島区が標榜する「国際アート・カルチャー都市」の拠点となる。

 

東口側の整備も急ピッチで進む。旧豊島区役所庁舎跡には国際戦略特区に認定された再開発事業で建てられたHareza(ハレザ)池袋の3棟の建物のうち、東京建物が運営するブリリアホールなどが入居するホール棟と豊島区民センターが、2019年11月にオープンした。1フロア400坪から500坪に及ぶ大規模オフィスや映画館TOHOシネマズが入居するハレザタワーは、2020年7月に運用が開始される。この街区には中池袋公園が整備され、映画やライブを楽しんだ人々が集う公園として位置付けている。

 

区ではさらに、サンシャインシティ東側の旧造幣局の跡地に防災公園「イケ・サンパーク」を2020年7月の完成を目指して整備している。これらの4つの公園をつなぐ交通として、「イケバス」と名付けた16人乗りの低速電気自動車の運行も開始。「ななつ星 in 九州」の車両をデザインした水戸岡鋭治氏によるかわいらしいバスがエリア内を走り回る。

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不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

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