仕事に厳しい相手は自分を成長させてくれる
「儲かっている社長」は、自分が成長すれば、さらなる「稼ぐ力」が身につくことを知っています。
今のままの自分では、今と同じしか稼げません。
そのため、目標とするライバルを見つけ「追いつけ、追い越せ」と、自分の稼ぐ器を大きくしているのです。
たとえば私は、20代のころは、同じ福井県出身で開業医になった先輩を、勝手にライバルとして目指していました。ただ、この先輩は「人を使うのはめんどくさい」「不動産投資も手間がかかる」と、自分一人でできる範囲で稼ぐ主義。
個人のドクターは、保険収入が5000万円までであれば「所得税の租税特別措置法第26条」という法律のもと、実際にかかる経費より有利な経費率が使えます。4800万円の社会保険収入があるとしたら、法律の範囲内で3200万円くらい経費を認めてくれるのです。
実際にかかる経費は1500万円くらいと考えられますから、差額の1700万円に50%の税金がかかったとしても毎年850万円は節税できる計算になります。
この先輩は、制度をうまく活用して、効率よく儲けているといえるでしょう。でも、この制度を利用する収入は5000万円止まりです。
それ以上のステップアップは見込めないため、私は30歳を過ぎるころから先輩をライバル視することはなくなったのです。
その後、電気工事会社の社長、同じ税理士の知り合いなど、何人かを目標にしてきた私ですが、現在は5歳くらい年下の建築不動産会社の社長を、勝手に「ライバル」と思っています。もしかしたら、お互いに切磋琢磨し合うお付き合いのなか、先方も私をライバルと思ってくれているかもしれません。
この建築不動産会社の税務を私たちが担当しているのですが、あるときこの会社の税務調査の際、こんなことがありました。
建築不動産会社では、社員の給与体系に固定給と歩合給があります。固定給と歩合給では、源泉徴収のやり方が異なります。しかし、社長から聞かれたとき、私が間違って答えてしまっていたのです。
税務署がそれを見逃すはずがありません。
社長は、税務署に「これはなんですか」と聞かれたので、「鳥山先生に教えてもらいました」と答えていました。そこで初めてミスに気づいた私は、自分の間違いですから、お詫びをしたうえで罰金を当事務所で負担することにしました。
その結果、そこまでする事務所はまずありませんから、社長はますます当事務所のファンになってくれました。
ちなみにそれ以降、この社長から問い合わせがあると、よほど「間違っていない」という自信があること以外は、必ず調べて確認し、返事をするようにしています。
また、このときを境に、社員にも同じように「お客さんには、曖昧な記憶で、いい加減な返事をしない」よう、徹底しました。
仕事に厳しい相手は、このように自分たちを成長させてくれます。煙たがらずに真摯に向き合うことで、お互いに切磋琢磨して大きく発展していくことができるのです。
鳥山 昌則
税理士法人とりやま財産経営 代表
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