「ショッピングモール近くのマンションは儲かる」の嘘
【Case】都市部から車で1時間くらい離れた郊外で「西日本最大級のショッピングモールが半年後に完成する。隣接地を買ってマンションを建てれば儲かるはず」と地元の某不動産業者が話を持ちかけてきた。インターチェンジや鉄道駅にもほど近く、宅地も造成されはじめている。新しい街のイメージが持て、需要も見込めそうだが、買いの判断をしていいものか。
郊外や地方に強い業者、業者とツルんでいるコンサルや個人投資家、不動産投資セミナー、実用書……あらゆるところで必ず出てくるワードが「郊外」だ。いまだに多くの業者やコンサルが大々的な宣伝をしている。ヤツらの決まり文句としては、
① 団塊世代はリタイア後に、環境が良い郊外へ住もうと考えるから需要がある
② 郊外の遊休地を活用した大型ショッピングセンターは集客力があり、隣接エリアのファミリーマンション等も需要があると見込まれる
③ 地方となればバスや自家用車を使ってまで鉄道駅に人が集まるということがあるから、駅近物件なら間違いない
など。せっかくなので、これらが間違いであることを説明していこう。
まずは①から。元気な時、現役で稼いでいて仕事を退職する前にはそんなことを思い描くのかもしれないが、実際にリタイアした人が住みたいのは、環境が良い郊外ではなく、病院やスーパー、ホームセンターに近い平地だ。自動車で1時間以上かかる郊外へ移住しても、たまたま近所に良い病院があるか、後で運良く病院が開業するということがない限り、結局また都市部へ戻ってくる。
そう、勘違いしないでほしい。「環境が良い=ほどよく田舎」なのだ。
人口がドンドン減っているこの時代にわざわざ過疎化するのが見えている郊外を好き好んで買うのは投資家としては1点。短期転売を目指すなら100点だ。投資の基本は地域全体が都市化されていて、公的機関もあり、商業、経済の中心地安定運用できる物件だ。どんな不動産も、人が居なければ無価値である。
30年前に造られた郊外の街は現在どうなっているかその姿を見れば、必然的に郊外の投資としての危険度が理解できる。例外もあるだろうが、そんな低確率で勝負するほど無駄なことはない。
次に②。確かに大型ショッピングセンターのような商業施設ができると、人で賑わい、スポット的に街もできる。うまく行けば後追いで病院や学校ができるだろう。だが、歳月が経つと興味が薄れ(ほかにも色々施設ができるから)、人は少なくなる(新しい物好き日本人の特徴)。そもそも商業地は静かではないので、住む人が限られるのだが、それで賑わいがなくなれば、もはや住む理由がなくなる。
商業施設も民間企業が運営している。儲からなくなれば撤退は普通にある話だ。公共のインフラとは違うことを認識すべきである。
かつては日本一となった「ダイエー」も、地方都市の至る所に点在したが、現在は皆無だ。わずかに名前を変えて存在しているが、当時の勢いは無く、イオン系の1ブランドになってしまった。
俺の故郷にもダイエーは存在したが現在はマンションだ。駅前商店街にあったが、現在はシャッター商店街。人の往来は極端に少ない。そんな「事実」から俺は田舎への投資は行わないことを鉄則にしている。
そして③。そもそもその地域、土地を知らない人からすれば需要があるように見えても、長く地元に住んでいる人からすれば「あそこは住もうと思わない」と言われ、テナント入居者が埋まらない物件がよくある。
土地勘がないというのは仕方ないのだが、調べようと思えば、自分で地元の業者へ足を運んで話を聞く、周辺の住民に話しかけてみるということもできる。そこを面倒がるから、儲からないし、損をするのだ。土地の地歴は大切だ。
少し話の趣旨と違うのかもしれないが、街でたまにみかける所有者不明の物件も、大きなニュースになった積水ハウスの地面師事件も、周辺住民は真実を知っている。はっきり言って、積水ハウスの調査能力不足と慢心が生んだ結果だ。