年収300万円の会社員「不動産投資で儲ける」…20年後の末路

本記事では、収益物件の売買や仲介事業を展開する株式会社BRAVEの代表取締役・山部和孝氏が、同業だからこそ見えてくる不動産投資の実態について、投資家から寄せられた意見を取り上げながら解説していく。 ※本連載は、『投資会社トップが激白!業者が「投資家を騙す」30のワード 不動産業者のハナシは信用するな』(クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋・編集したものです。

上場企業の謳い文句「年収300万円から不動産投資」

【Case】スルガ銀行の不正問題が表面化する前まで上場企業Sの「年収300万円から不動産投資」という広告をよく目にした。最近は年収を500万円に額面をアップさせているが、そもそもその程度の年収だけで投資家のスタートラインに立てるようなものなのか。

 

 

「年収なんか、関係ない。本人のやる気次第だ!」という根性論を口にするのは簡単だが、さすがに年収300万円でそれを言うのは無責任すぎる。

 

年収300万円となれば、収入から生活費を引いたら、いくらも残らない。それで銀行から融資を受けられたとして物件を買うと、もし家賃収入が減った場合「追い金」が見込めないので自己破産は免れないだろう。まぁまず銀行が融資を通すこともないと思うのが普通なのだが、スルガ銀行&スマートデイズのようなところに巻き込まれないためにも、それは常識外と覚えておきたい。

 

 

投資をやろうという時に、多くの方がまず頭に思い描くのは年収だ。日本はほとんどの労働者が会社員だから、給与所得になる。これは個人それぞれに計算式が変わることもなく、一律した基準としてわかりやすい表現だから、業者も使う。

 

だが、実際はそれだけではない。例えば、親から多額の資産を相続している方なら、年収がゼロだって投資はできる。また、家族など自分以外の誰かが収入を得ているならば、これも投資ができなくはない。むしろ大事なのは、今、現金をどれだけ持っているかというところ、そして融資を受けてから完済するまでの期間内のキャッシュフローが大丈夫かどうかを見て審査する。

 

融資ということをシンプルに考えると、銀行は返済できない場合に備えて担保を確実に押さえるのだから、逆にいえば購入する物件の担保評価がそれなりにあれば融資は通る。そうなると、担保評価が出る物件との出会い、さらにいえばそうした物件を紹介してくれる業者との出会いがスタートラインだ。

 

だいたい、不動産業者でも、1000件当たって1つ、2つほどいい物件があればラッキーくらいの確率。投資家もそれくらいの活動量があって、やっといい出会いがあるということを理解しておきたい。

 

年収300万円で資産がない、でも投資をしようと考えている方がいるならば、まずは現金を貯め、投資ができるレベル、せめて年収700万円くらいまで収入増加を目指すことだ。そして、中古区分でいいから無借金で物件を購入して、家賃収入で少しずつ増やしていく。そして手元の現金を増やし、与信を上げ、好機を迎えたら1棟買いをするという将来へのシナリオを、自分なりに描いておくことだろう。

 

「絶対に儲かる」と業者は言ってくる。
「絶対に儲かる」と業者は言ってくる。

「フワッ〜」としたイメージを的確に煽り倒す業者…

【Case】不動産業者を回っていたところ、「1棟なんていきなり買えるわけないですよ。都心で新規分譲するマンションの1室を買って、それを区分所有すれば月々儲かりますよ」と営業をかけられた。自己資金は300万円程度だから銀行融資は必須だが、それでも「絶対に儲かる」と言い切る業者の言葉は、信じて良いものか。

 

 

まず一言。「絶対」を口にする業者には、この言葉を突きつけてほしい。「絶対というなら、公正証書をつくりましょう。それなら契約します」と。この世の中に絶対なんてないし、そこまで自信があるなら公正証書をつくっても何の影響もないはずだ。それができないということは、絶対という言葉を使った瞬間に騙そうと考えたと言っていいだろう。絶対に儲かるのなら自分で買うやろ普通は(笑)

 

 

もう一つ、想像してみたらすぐにわかりそうなものだが、新築の区分マンションをわざわざ所有した上で、借主を探して入居させるということで儲けられるマンションなんて、今どきあるだろうか? それを真顔で説明する業者の心情がまったく理解できない。儲かるなら、業者が一括借り上げかつ家賃減額をしないと公正証書を交わして販売をすればいいと思うのだが。そこまでしても、業者は最後は飛んで(破産)手仕舞いするだろう。

 

事実、区分マンションから不動産投資をはじめる投資家は多い。そして「家賃収入が毎月あって、少しリッチな暮らしができる」という「フワッ〜」としたイメージを抱いているし、業者もそこを目一杯煽っている。

 

ここで、リスク(家賃が下がること、修繕が必要なこと、税金が必要なこと、多くの物件は価格が下がる事)をきちんと明示できるのが、本当に信用していい業者。新築の区分マンションであれば、他の部屋の稼働率がどれくらいか、月々の管理費や修繕費をいくら払わなければならないか、借主を見つけてくれる仲介や管理業者にいくら支払うことになるか、売却時の相場はどれくらいかなど。

 

通常、それらの情報を投資家が持ち合わせていれば、物件を購入するか否かの判断、また購入後に出口戦略をどうするか、いつ頃にするかなどの検討もできる。

 

また、新築の区分投資の多くがサブリース契約になっているが、これもヘンな話だと気づくべきだ。業者は「一定の期間(概ね3〜10年くらい)、同じ家賃で借り上げます」と言うが、物件自体は劣化していくのだから、そもそも矛盾している。設備が劣化するのに同一家賃はあり得ない。新築で入居した人が「一生住む」くらいでないと家賃は下がる。東京の都心ですら新築は下がるのだから。

 

普通に考えてほしい、物価がインフレに向かわないのに家賃が上がる根拠はどこにあるの? 事業用なら需要と供給なのであるが、住居に関しては「絶対」にあり得ない。この絶対は公正証書にできる絶対だ! ローンの残っている間、キャッシュアウトしないなんて嘘でしかない。

 

また、土地の有効活用をはじめとする地主系有効活用専門の建築請負会社は利益先取り方式なので、借り上げを継続できるシステムを作り上げている。基本的には無担保の土地に相続対策を謳い低価値のペラペラのアパートを、異常かと思うくらいの高い値段で請負契約を結び建築する。

 

恐ろしいことに木造系、軽量鉄骨系で請負金額の30〜40%くらいは利益になる商品が非常に多い。RC系でも20%くらいは普通に利益率がある。でないと、サブリースが継続できないからである(かぼちゃも同じカラクリ)。数字の根拠を示すと、請負1億円のアパートだと、4,000万円くらいは利益としないとサブリースが成り立たない。

 

この時の契約時の借り上げ利回りは、6%前後が多いと思う。っていうことは年収600万円。10年の稼働率が50%と仮定しても保証300万円×10年=3,000万円。まだお金は残る。だから高額歩合が営業マンに払える。

 

基本的に大手有効活用系は10年は完全保証が多い傾向だ。だから10年経過後の修繕と家賃減額にトラブルが多いのが事実だ。そもそも30年後の予想って誰ができるのか教えてほしいよ(笑)こんな儲からないボロアパートで大規模修繕費用を捻出できるのか、疑問が残る。

 

派手なTVコマーシャルはイメージ向上戦略であり、オーナー自身の収入増加のためではないことに気づくべきだ。木造、軽量鉄骨のアパートの20年後の姿を想像したら、悪寒しかしないよ。プロであれば。

 

大手有効活用系の20年前の物件を見れば、20年後のイメージはできるだろう。自分の財産を食い物にされて、ボロアパートを残されて、途方に暮れる姿が目に浮かぶ。そのボロアパートは「これは貴方の資産です」と謄本と固定資産税課は一生言い続ける。これこそ「負動産」である。

 

実際にここまでリスクを説明すると、まず、新築は買わない。中古で立地がいい物件、銀行の担保評価と売値の差が小さい物件を探すことになる。そうなると正直、不動産投資って儲からないなぁと気づく。そして、先のような家賃収入だけを求めるのではなく出口、つまり売却についても考えていくことになるだろう。

 

さらに言うと、都心で高額な区分マンションよりも、少し郊外で1棟買いできるマンションの方が儲かるかもしれない。そうした情報を自分で探しながら、同時に業者とも話をしながら、動いていくことになるだろう。なにはともあれ優良なパートナー探しが一番大事だ!

 

 

株式会社BRAVE 代表取締役

山部 和孝

 

株式会社BRAVE 代表取締役
不動産コンサルタント

1974年生まれ、鳥取市出身。2008年に大阪にて株式会社BRAVEを創業し、収益物件の売買・仲介事業を展開。
さらに投資用マンションを自社で開発、進行中のプロジェクトを含めた開発費の総額は160億円を超える。また、不動産コンサルタントとして土地の有効活用や相続・節税対策、M&A、融資時の金利交渉といった投資に関する総合的な課題の相談にも応じる。
経験に基づく実用的な提案、土地にまつわる歴史的背景や地理・地勢、関係者の属性、マーケットの現況など幅広い知見からの助言には定評があり、顧客のみならず業界関係者からも相談・問い合わせが絶えない。

著者紹介

連載投資会社トップが激白!『不動産業者のハナシは信用するな』

不動産業者のハナシは信用するな

不動産業者のハナシは信用するな

山部 和孝

クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

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