本記事では、収益物件の売買や仲介事業を展開する株式会社BRAVEの代表取締役・山部和孝氏が、同業だからこそ見えてくる不動産投資の実態について、投資家から寄せられた意見を取り上げながら解説していく。 ※本連載は、『投資会社トップが激白!業者が「投資家を騙す」30のワード 不動産業者のハナシは信用するな』(クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋・編集したものです。

「うちは銀行とつながっている」に騙されるな

【Case】不動産投資は銀行融資がカギなので、コツコツと情報を集めている。それを不動産業者に話すと、「そんなことをしなくても、うちは銀行とのパイプが太い。融資担当も紹介できる」と言ってきた。その言葉が本当かどうかを見分けるポイントはないか。

 

近年ではスルガ銀行、西武信用金庫、商工中金などの不正融資等の事件、株式会社スマートデイズ、株式会社TATERUの融資資料偽装事件などが発生しているが(これは悪い例としても)、業者と銀行は、切っても切れない仲だ。基本的に事業活動をしている不動産業者なら、どこかしらの銀行と取引をしているから、パイプがあるという言葉に偽りはない。

 

 

だが、一年を通して、業者が絡んだ物件での融資額が数千万~数億円程度だったとして、融資するのが法人営業をする銀行の支店であれば、不動産業者は「お得意様だが、上得意ではない」レベルの扱いであり、銀行としては単なる取引先か、知っている業者の一つに過ぎないという認識だろう。

 

こうした関係性の銀行をお客が選んだ場合、銀行としてはごく一般的なお客として申込を引き受け、審査をすることになる。それならば、わざわざその業者や銀行を選ぶメリットはない。自分の目で選んで電話営業するのと変わらない。

 

では、この業者の言葉が信用できるかどうかのポイントは何か。それは、自社でコントロールする物件とお客の数だ。考えてみてほしい。単に融資を希望するお客を銀行に紹介するだけなら、銀行にとっては融資を受ける本人こそがお客であり、そこを第一に大事にする。単なる業者は二の次だろう。だから、業者を優遇することはない。

 

だが、業者が自社所有(数十億円の借入)していたりコントロールできる物件(お客より決定権がある)が多く、優良(金融資産で億を超えたりする)なお客を多く抱えていたら、銀行にとってはこの業者も優良顧客であり、当然ながら大事にする。

 

また、いくつも物件を持っている業者なら、好機到来となった時に融資を受けられるように複数の銀行とつき合いをしているのが普通だ。それも、担当者は当然として支店長、役員クラスとつき合いができるように努力をしているはずだ。

 

それがないとしても、業者がコントロールする借入が50億円程度を超えてくれば、支店長とは一心同体だ。万が一不良債権になったら、確実にクビが待っている。そんな優良業者が、もしもお客の融資で相談してきたら、話を聞かないわけにはいかない。そして、話を聞いたら、余程でなければ断れない。これが「太いパイプ」だ。

 

この辺の情報は表に出ているものではない。調べようもないだろう。だったら、業者に聞けばいい。聞いて答えられないなら噓。ホームページなどで公表することはないが、聞かれて答えられない情報ではない。

 

こんなことばに要注意
こんな言葉に要注意

プロ「不動産投資の失敗は破産への直行便だ」

【Case】仮想通貨の少額投資で失敗しており「自分には、投資は向いていない」と思っている。だが、知人に連れて行かれた不動産投資セミナーで、某コンサルが「不動産投資は何度でも失敗して、また立ち上がって挑戦したら、人生はトータルで儲けが出る。だからまず物件を買う」と語っていた。以前の投資よりも金額が高く、ためらいも感じているが、某コンサルの言葉通り「まず、やってみる」のが正しいのか?

 

「何も考えずに行動して、失敗する」ヤツは、どんな世界にも存在する。その失敗が、取り返しのつく話ならいいが、そうでないこともあるという「現実」をもっと知るべきだと俺は思う。不動産投資も、失敗したら取り返しがつかない。失敗は破産への直行便だ。まあ、破産しても「命」までは取られないから取り返しがつくと言えばつくのだが……人生、誰も遠回りはしたくないだろ?(笑)

 

 

質問者がもし投資に向いていないと思うなら、手を出すべきではない。向いていないという思考で物事を考えても、ポジティブな発想にはならないし、もちろん儲からない。万一、偶然儲かったとしても、その理由が偶然なわけだから、次に成功するタイミングも偶然を待つしかなくなる。それでさらに大きな成功をする確率は、ものすごく低い。一言でまとめると「連続した情報収集と勉強と努力ができないなら成功はない」と言いたい。

 

次に気になったのは、この某コンサルの言葉だ。不動産投資で、何度も失敗するなんてあり得ない。何度も失敗に堪えうるだけの資産など、ほとんどの人が持っていないからだ。もしもそれができるとなれば、融資する銀行の不正を疑うべきだろう。

 

例えば、一般の方までもが悪名ぶりを知っているスルガ銀行は、業者と事前に打ち合わせをしながら、口座残高の水増しを手伝ったという。ここで融資を受けた顧客の金利は3%前後から4%弱。普通預金の金利が0.02%という中にあって極めて高い。スマートデイズのかぼちゃの馬車事件ではごく普通のビジネスパーソンがこの条件で融資を受け、物件を購入してオーナーになっていった。

 

この事件で騙されたと嘆く被害者のうち、どれくらいが条件を把握し、理解していたかは不明だが、(表面上は)了承して契約したことだろう。それで入手した物件が1億円で、もし利回り10%(そもそも今の時代に新築10%なんて都心には1000%ない!)だと、1年間で1,000万円の儲けになる。毎月収入満室で83万3,333円、金利3.5%で30年借りると毎月返済は453万1,181円、この時点で返済比率は54%超。

 

これに管理費、固定資産税、都市計画税、修繕費、広告料など支出が発生する。普通の脳みそを持っていたら、この時点で危険だと判断できるレベル。詳しく書くと減価償却費がなければキャッシュフローはまったく出ない計算になる。正直、この物件を買うくらいなら投資信託を買っている方がまだましなレベルだ。

 

かぼちゃ事件はサブリースで7〜8%前後の商品だった。収入が毎月663万6,666円、でも返済は変わらないので、返済比率が67%超に上昇する。本当ならこの時点で「まとも」な銀行ならば融資不可で返答する案件だ。業者はキャッシュフローも大変になることはわかっているから、銀行と結託して返済期間を40年、45年と伸ばして、見せかけ上は返済比率が下がり、キャッシュフローもクリアになって安定して収入が入るように説明したのだろう。

 

結論、不動産投資は焦らずに物件を探して歩き、好条件な物件と出会ったら即座に買う。これが鉄則だ。そして、1棟目は絶対に失敗しないと決め、納得するまで情報を集め、業者に明確な理由を言えるまで考えて結論を出すべきだ。

 

 

株式会社BRAVE 代表取締役

山部 和孝

 

不動産業者のハナシは信用するな

不動産業者のハナシは信用するな

山部 和孝

クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

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