緊急事態延長のインパクト

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安倍内閣は、5月4日、新型インフルエンザ特措法に基づく緊急事態について、終了日を5月6日から31日へ延長すると正式に決定した。再延長は、経済的・社会的、そして政治的に困難であり、安倍政権には感染収束へ向け今月中の成果が求められるだろう。また、地域により段階的な規制の緩和が行われ、2020年度第2次補正予算が早期に編成される見込みだ。

緊急事態延長:再延長は経済・社会・政治的にあり得ない

新たに確認された新型コロナウイルスの感染者は、全国的に漸減傾向をたどっている(図表)。安倍内閣は、4月7日、7都府県に対して初めて特措法に基づく緊急事態を発令し、16日には対象地域を全国に拡大した。対人接触の削減を求め、商業施設の休業、企業の在宅勤務、学校の休校などが要請され、経済的、社会的に甚大な影響が及んでいるが、その成果は数字に現れつつある。ただし、感染再拡大のリスクを抑制するため、さらに25日間の延長が必要と政府は判断したのだろう。

 

期間:2020年3月1日〜5月6日 出所:NHKの集計よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表]確認された新型コロナウイルスの感染者数 期間:2020年3月1日〜5月6日
出所:NHKの集計よりピクテ投信投資顧問が作成

 

この延長は予想されていたことであり、市場の大きなインパクトがあるとは考えにくい。もっとも、自粛が中心とはいえ、経済活動を大きく抑制している以上、景気に及ぼす負の影響は日々拡大している。特に、所得・売上の急速な減少に直面する個人・企業が急増し、生活基盤や経営の持続性に明らかな問題が生じた。結果として、社会の安定性に関わる問題にもなりかねない。

 

米欧において都市封鎖に解除の動きが見られるなか、緊急事態を再度延長することは、政治的に困難だろう。いい換えれば、5月末までに緊急事態解除の目処が立たない場合、安倍晋三首相の責任問題になりかねない。期限を5月31日とした時点で、安倍政権はそれが自粛要請の限界と腹を括っているのではないか。

次のステップ:早期の2020年度第2次補正予算編成

安倍首相は、4日の会見において、1)延長した期間は経済再開のための準備期間であること、2)地域の実情に合わせ、自治体によっては5月31日を待たずに緊急事態を解除すること、3)早期に追加の経済対策を講じること、4)PCR検査の体制を拡充し、検査実施の件数を大幅に増やすこと、5)レムデシビルの特例承認、アビガンの治験・承認プロセスを早期に進めること…などを強調した。

 

また、西村康稔経済財政担当大臣は、国会の答弁のなかで、5月14日、21日に新型コロナウイルス感染対策専門家会議を開催、地域毎に緊急事態を見直す方針を示している。安倍首相、西村大臣の発言から、特定警戒13都道府県以外については、5月中に知事の裁量で経済活動の段階的な再開が図られる方向といえるだろう。

 

安倍政権にとり、次の課題の一つは2020年度第2次補正予算の編成だ。緊急事態を延長し、商業活動の一部自粛を継続する以上、所得や売上の減少が続く個人、企業に対する生活支援、経営支援を強化しなければならない。また、自民党の岸田文雄政調会長が提案する家賃補助についても、売上が大幅に縮小した事業者を対象として、実現する可能性が高まっている模様だ。与野党を問わず様々な要求・提案があることからも、連休明け後に第2次補正予算の編成に向けた調整が進むだろう。

 

さらに、検討の機運が高まっているのは、9月新学年制度への移行だ。平時の実施には障害が多いものの、今回は積極的な自治体が少なくない。安倍政権としても、米欧主要国と学校年度を合わせる大きな改革となる可能性があり、政府内において課題の洗い出しが始まった模様だ。

 

いずれにせよ、新型ウイルス禍は、日本の財政に極めて大きな負荷となることが確実である。日銀が保有長期国債の積み上げに関する年間上限を撤廃したことで、当面の財政ファイナンスに問題は生じないだろう。しかし、実質的にMMTを採用したかのような財政政策は、長期的には円及び国債価値に影響を及ぼすことが考えられる。資産運用に当たっては、将来の通貨価値下落リスクを意識すべきではないか。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『緊急事態延長のインパクト』を参照)。

 

(2020年5月8日)

 

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社

シニア・フェロー

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。
著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。
2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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