親から相続した土地を、我が子に貸したいAさん
Aさんは、3年前の相続で千葉県にある土地を取得しましたが、特に利用する機会がなく更地のままとなっていました。その後、サラリーマンをしていたAさんのご子息から、この千葉県の土地を借りて事業を始めたいと考えているとの相談を受けました。
開業の計画や創業資金の確保など話が進むなかで、Aさんが所有する土地に対する地代の支払いや、その権利関係について考えることになりました。
借地権は、規定される法律により性格が異なる
借地権は、民法や借地借家法、税法(法人税・所得税・相続税)などいくつかの法律で規定され、それぞれの法的性格を持っています。
借地借家法では、建物の所有を目的として土地を借り、地代を支払うことによって借地権が発生します。一方税法では、地代の支払いがない場合(使用貸借)であっても借地権が発生することがあります。逆に地代の支払いがある場合でも、「土地の無償返還に関する届出書」を提出することにより、借地権が発生しないと考えることがあります。
このように借地権は、それを規定する法律の趣旨により性格が異なることを踏まえて、Aさんご家族には、税法の内容を中心に借地権の説明をすることにしました。
借地権の設定…権利金を授受する慣行がある地域とは?
税法において、借地権とそれを設定するために支払う権利金については、「権利金の授受の慣行がある地域」に限って認識されます。そもそも権利金の授受の慣行がない地域では通常の地代の支払いをしていれば、特段税務上の問題は生じません。
では、「権利金の授受の慣行がある地域」とはどのような地域なのでしょうか。
権利金の授受の慣行があるかどうかは、それぞれの地域に設定されている借地権割合によって決まり、その割合が30%以上の場合に権利金の授受の慣行があると判断します。
借地権割合は、路線価図に記載されており、各路線価の右にアルファベットで表示され、A90%~G30%まで、各地域の特徴を考慮して定められています。路線価がない地域でも、倍率表に地域ごとの借地権割合が記載されています。