不動産や土地の相続は、ケースごとに最適な方法が異なります。相続についての正しい知識を身に付けると同時に、所有物件やご家族、相続人の状況を正しく把握しておく必要があります。今回は、税理士法人田尻会計の税理士・古沢暢子氏が「不動産管理会社設立」を選択するのはどのようなケースなのか、事例をもとに解説します。

Case1:娘3人に「株式」として財産を承継させたい

神奈川県で一人暮らしをしているA様から、お住まいの土地建物を中心として相続対策をしたいとの相談を受けました。

 

お伺いしたお住まいは、欄間や鴨居が美しい日本家屋で、お部屋から見える大きな桜の木も印象的でした。A様はご家族の歴史が詰まったこの家をとても大切にしていましたが、ご高齢になったこともあり、広い家に一人で住むことに不安も感じていました。A様のご家族は奥様と3人のお嬢様ですが、仕事や家庭の事情もありA様とは別の場所で生活をしています。

 

相続対策のお話を進めたところ、A様が現在お住まいの土地はご家族で承継していきたいが、老築化した建物は思い切って取り壊し、賃貸マンションを建築して財産を活用しながら承継していく、という案が有力になってきました。

 

一番有効な方法は、一体何なのか… (画像はイメージです/PIXTA)
一番有効な方法は、一体何なのか…
(画像はイメージです/PIXTA)

 

財産承継者となる3人のお嬢様にはできるだけ財産を平等に相続させたい、そして新たに建設する賃貸マンションを含む不動産賃貸業を、奥様亡き後も3人で協力して続けていってほしい、というA様のご要望から、「不動産所有方式」による不動産管理会社の設立を提案しました。

 

「不動産所有方式」では、奥様と3人のお嬢様が株主・役員となって会社を設立し、銀行から建築資金の融資を受けて、A様所有の土地の上に会社名義で賃貸マンションを建築します。

 

会社に入る家賃収入のなかから、役員となったご家族に給料を支払うことで生前に所得を分散させることも可能となり、A様が個人で賃貸マンションを建築する場合よりも、所得税と法人税等の両面から計算した節税効果も確認できました。

 

A様の年齢を考えれば、個人で借入をして賃貸マンションを建築する方が、相続税対策への即効性はありますが、A様は他にも既に多くの所得があり、存命中の所得税の軽減を図ることを優先させました。

 

何より重要だったのは、A様居住の土地建物を「不動産」としてではなく、遺産分割や事業承継に柔軟に対応できる「株式」という形で承継するという点です。3人のお嬢様には事業経験はありませんが、ご両親とともに少しずつ不動産経営を学んでいかれることでしょう。

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