父と借地権付建物を共有…相続はどうなるのか【税理士の解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

遺産の中に借地権付建物がある場合には、建物だけでなく借地権も相続の対象となります。一般的に借地権自体を登記することが少ないため、相続人がその契約内容を正確に把握できていない場合や、そもそも借地権が相続の対象となる財産であると思わなかった、ということも多くあるようです。ここでは税理士法人田尻会計の税理士・古沢暢子氏が、相続税の対象財産となる借地権とはどのようなものか、その権利関係や実際の利用状況を把握する手段、相続税評価額の算定などについて、実際の相談事例を踏まえながら考えていきます。

借地権の種類…「地上権」と「賃借権」

借地権は、他人が所有する土地の上に建物を建て、地代を支払ってその土地を利用する権利です。

 

借地権には「地上権」と「賃借権」の二種類があります。「地上権」は“物件”であり、売却や転貸を自由に行うことができるのに対して、「賃借権」は“債権”であり、借地上に建てた建物を第三者に売却する時や建替えを行う際には地主の承諾が必要となります。

 

実際の契約においては、借地権のほとんどは賃借権であるため、以下においては借地権を「賃借権」に限定して進めていきます。

借地権付建物を相続したAさんの事例

Aさんはお父様の相続により、借地権付建物(Aさんとお父様の自宅として使用)を相続しました。

 

Aさんは、お父様が地主に地代の支払いをしていたことをご存じで、借地権を相続財産として認識していましたが、実際にその借地権がどのように扱われるのか教えてほしいと、相談にいらっしゃいました。

 

この借地権付建物は、Aさんの持分1/3、お父様の持分2/3の共有となっていました。このためAさんは借地権についても建物と同じ割合で共有していると考えていましたが、借地権については登記がされていなかったため、謄本や固定資産税課税明細書を見てもその権利関係を確認することはできませんでした。

 

このような場合、借地権についてどのように調べていけばよいのでしょうか。

 

【借地権の調査方法】

①借地契約書を確認する

地主との間で交わされた借地契約書があれば、契約期間や更新時期、借地権の所在や面積、地代の支払い状況等について把握することができます。なお、平成4年8月1日より前の旧借地法においては、契約書面が存在しない場合もあり、このような時には地主側と連絡を取って契約内容を明らかにすることも必要となるでしょう。

 

②建物の登記事項や建築確認申請書類等から、底地を特定する

借地権自体は登記されていないことが殆どですが、借地上の建物の登記事項から借地権を設定している底地を特定できることが多くあります。そして底地に関する謄本を取得できれば、借地権に関するより詳しい情報を得ることができます。

 

稀な事例ですが、借地権が設定されている底地と、その上にある建物とで「所在」が異なっている場合があります。これは建物の敷地となる土地が分筆・合筆された時に、建物所在の変更登記を行わなかったことなどに原因があると考えられますが、このような時には閉鎖謄本を取得して、その土地の過去の状況などを調べる必要があります。

 

また、公図上の一筆の土地の一部分だけに借地権が設定されているような場合には、建築確認申請時の分割測量に関する情報も参考になります。

 

③税務署等へ提出された届出書類を確認する

Aさんの事例では借地契約書が見つかりませんでしたが、税務署へ提出された「借地権の使用貸借に関する確認書」が保管されていました。

 

「借地権の使用貸借に関する確認書」は、親族間などで借地権の貸借があった場合、それが使用貸借(無償)で行われることを確認する書類であり、転借人(Aさん)・借地権者(お父様)・地主が連名で所轄税務署に提出します。

 

この確認書を提出することにより、Aさんがお父様から借地権を転借する時には、その権利の価額は認識しません(贈与税課税はありません)。そしてお父様に相続が発生した時には、借地権はAさんへの転貸がなかったものとして自用の評価を行うこととなります。

 

40年近く前に提出された書類であったため、Aさん自身もその事実をお忘れになっていたようですが、この確認書の内容により借地権全体をお父様の相続財産とすることになりました。

 

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税理士法人田尻会計 税理士

平成28年3月税理士登録 日本FP協会AFP 登録政治資金監査人

一般企業の経理部を経て、平成15年税理士法人田尻会計入社。
法人及び個人のお客様の監査・決算業務とともに、現在は相続・事業承継業務を多く担当する。
毎月お客様を訪問し丁寧に話を聞くことで、適切なアドバイスができるよう心掛けている。

著者紹介

連載相続専門税理士が事例で解説!「相続・事業承継」の進め方

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