活用していない土地を借りたいと相談されたら、実際に貸し借りを行う前に、地代の支払いや、その権利関係について理解しておく必要があります。税理士法人田尻会計の税理士・古沢暢子氏は、親族間の土地の貸借について、経緯と内容を明確にしておくことが大切だと述べています。本記事では、相続したまま活用していない土地を、我が子に貸したいと考えているAさんの例をご紹介します。

「借地権の認定課税」が行われるケース

Aさんが所有している千葉県の土地は、借地権割合が60%の地域でしたので、「権利金の授受の慣行がある地域」に該当します。

 

従って、借地人となるご子息(またはその会社)からAさんへ借地権相当額の権利金の支払いをしないときには、税法上、Aさんからご子息(またはその会社)に対して権利金に相当する利益供与があったものとして認定課税が行われることとなります。

 

なお、税法上の認定課税については、地主(貸主)と借地人(借主)が個人か会社かによって、それぞれ取り扱いが異なります。(文末の図表1参照)

 

①地主:個人+借地人:個人 → 贈与の認定課税/使用貸借で認定課税回避

 

Aさん個人所有の土地の上にご子息が個人で建物を建て、権利金を支払わずに借地契約をした場合、地主であるAさんには課税はありません。一方借地人のご子息は、その土地の60%分の借地権(経済的価値)をもらったものとして、贈与税が(認定)課税されます。

ただ、今回のように身内同士の貸し借りでは、権利金も地代の支払いもしないという場合が多いでしょう。この実態に合わせて、無償で土地を貸す、もしくは固定資産税相当額以下の地代を授受する場合には、「使用貸借」による契約として贈与税は課されません。

 

②地主:個人+借地人:会社 → 受贈益の認定課税/無償返還の届出で認定課税回避

 

次に、ご子息が代表者となって会社を設立し、その会社がAさん個人所有の土地の上に建物を建てて、権利金を支払わずに借地契約をした場合を考えます。

 

この場合も地主であるAさんには課税はありませんが、ご子息の会社は、その土地の60%分の借地権(経済的価値)をもらったものとして、受贈益(法人税)が認定課税されます。

 

法人が契約の主体となる際には、個人間で成立した「使用貸借」という考え方がありません。その代わりに「土地の無償返還に関する届出書」をAさんと会社の連名で税務署に提出し、将来は会社からAさんへ、土地が無償で返還される意思を示すことで、受贈益の認定課税は行われないこととなります。

 

次ページ「身内間での土地の貸借」で気を付けるべきこと

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