「4時間睡眠」を続けると…?医師が実践したら想定外の結果に

健康のカギともいえる「睡眠」を削るとどうなるのでしょうか? オタク気質の医師が、体を張って挑戦・結果を分析します。第一線の医師による渾身のレポート! 本記事は『110歳まで元気に生きる! 実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント』(幻冬舎MC)から一部を引用し、内科医である永野正史氏の自ら体をはった検証と、医学的な根拠を解説します。

毎日の生活を「4時間睡眠」で乗り切ることは可能か?

●3回も予防接種したのに、インフルエンザにかかってしまい…

 

英国のマーガレット・サッチャー元首相が4時間しか眠らなかったことは、よく知られています。ビジネスなどの成功者の話でも、短時間睡眠のエピソードは珍しくありません。

 

そこで、人は短時間睡眠でも健康を維持できるのか、実際に試してみようと4時間という睡眠時間に挑戦することにしました。

 

毎日夜の12時に寝て、朝方の4時に起きるのですが、始めたのがタイミングの悪いことに12月からでした。そのため、起きると外はまだ真っ暗です。散歩に行くには早過ぎるので、家の中で体操をしたり、静かに本を読み、明るくなりかけてきたら外に出て、毎日朝日を拝んだりしていました。

 

4時間しか寝ないでいると、日中はたびたび睡魔に襲われます。そういうときはカフェインを飲むなど眠気との闘いで、時間があれば「ちょっとここで15分ほど仮眠を取ろう」と、そんなことばかり考えて生活していました。

 

しかも、睡眠時間が短いと脈拍が十分に下がり切らないのです。実験を始めるまでは、45~48くらいで推移していた最低心拍数が、4時間睡眠の間はずっと52~55と高い状態でした。脈拍が下がり切らないと心臓にも負担がかかるので、危機感を覚えました。

 

予防注射を3回も接種したにもかかわらず、インフルエンザにかかってしまい、免疫力も低下していたと思われます。しかも、その症状はかなり重度なものでした。いろいろな病気をしましたが、あれほどつらかった経験はありません。私は我慢強いほうですが、それでも身の置き場がないほど全身が痛くて苦しかったのです。完治するまでにもかなりの時間を要しました。
 

2018年12月から2019年1月の夜間の脈拍が増加している(短時間睡眠を実行していた期間)
[図表]最低心拍数が短時間睡眠で高めに推移したグラフ 2018年12月から2019年1月の夜間の脈拍が増加している(短時間睡眠を実行していた期間)

 

●睡眠不足は心疾患のリスクを高め、寿命を縮めることがわかっている

 

やはり十分な睡眠を取らなければ免疫力が低下して、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。また、睡眠不足は心臓発作など心臓血管疾患や脳卒中のリスクを高め、寿命が短くなることなどが研究でも報告されています

 

※ 厚生労働省生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット『睡眠と生活習慣病との深い関係』

 

これにより短時間睡眠に限界を感じ、結局4時間睡眠は2ヵ月ほどで中止にしました。現在は7~8時間の睡眠を確保するようにしています。

 

しかし、短時間睡眠を試して良かったこともありました。私は金縛りの一件から何年も、入眠剤を飲まないと眠れなかったのですが、実験を始めた夜から入眠剤なしで爆睡するようになったのです。これは今でも続いており、実験後は1錠も入眠剤を飲んでいません。

 

さらに、4時間睡眠の間は夢を見なくなったのです。それくらい深い睡眠に入っていたのだと思います。睡眠時間を確保している現在は、楽しい夢を見ています。

 

毎日4時間睡眠でも健康は維持できる!?
→ウソ

 

習慣にしよう!

●稀にショートスリーパーの人はいるようですが、ほとんどの場合は短時間睡眠は免疫力を低下させるので、十分な睡眠時間を取るようにしましょう。

●質の良い睡眠を確保するために、寝る1時間前にぬるめのお風呂にゆっくり浸かるなどしてリラックスできる環境を整えましょう。

 

 コラム  睡眠不足は「認知症リスク」を高める

 

私たちの体内には、細胞に栄養を運んだり、細胞から排出された老廃物を運び出し処理するリンパ系があります。脳内にはリンパ系がありませんが、よく似たシステムはあります。

 

脳と脊髄には「脳脊髄液」と呼ばれる液体が循環しており、脳と脊髄の血管周囲に沿って移動しながら栄養分を分配し、老廃物を取り除いています。

 

脳内の細胞は、大きく分けて神経細胞とそれ以外の細胞(グリア細胞)があり、グリア細胞はいわば神経細胞の世話役のようなもので、神経細胞に栄養を補給したり脳のバリア機構を支えるなどさまざまな役割を担っています。

 

通常、脳は神経細胞とその隙間を埋めるグリア細胞、血管などでぎっしりと埋め尽くされていますが、私たちが眠っている間はグリア細胞が縮んで隙間を作り、そこに脳脊髄液が流れ込む排水溝のような役割を果たしています。これが、リンパ系のように脳内の老廃物を効率よく運び出すことから、グリア細胞とリンパ系を合わせて「グリンパティック・システム」と呼ばれています。

 

そのため、睡眠時間が短かったり睡眠の質が低下したりしていると、アルツハイマー病の原因の一つとされるアミロイドβなど脳内のゴミが排出されずに蓄積するといわれています。したがって、短時間睡眠は認知症のリスクを高めるとも考えられます。

 

また、グリア細胞は40分以上の有酸素運動で発達することが研究によって明らかにされています。これにより脳脊髄液の流れが良くなり、老廃物の排出がスムーズに行われることで、アミロイドβなどが脳内に溜まるのを予防することができます。

光の入らない場所に長くいると、時間感覚は消滅する?

●生体リズムが乱れて昼夜が逆転生活する

 

以前、暗い洞窟で何日も生活すると人間はどうなるのか、という実験が外国で行われた話を本で読み、それが頭の片隅に残っていたのだと思います。私は、大学4年生の夏休みに暇を持て余して、自分でも同じ実験をやってみようと思い立ちました。

 

中学時代は写真に凝っていて現像も自分でやっていたので、ちょうど暗幕を持っていたのも幸いしました。六畳の部屋の窓に暗幕を張り、真っ暗にしたら電気をつけるのも消すのも自由、寝たいときに寝て起きたいときに起きる、時計はわざわざ見に行かないと分からない場所に置き、お腹が空いたら食事を作っても外食でも良し、あとは好きに過ごすというルールを作り、10日間ほど暮らしてみました。

 

暗室生活を始めた当初は、原始的な生活を楽しんでいるところがありました。しかし、だんだんと「こんな怠惰な生活をしていてはいけない」と、人生について真剣に考えるように気持ちが変化し、ほとんどの時間を将来の夢に費やしていたのです。

 

そして、何日目だったのかは覚えていませんが、お腹が空いたので時計を見ると2時を過ぎていました。これではお腹も空くはずです。あまりにもお腹が空き過ぎて食事を作る気にもなれず、何か食べに行こうと外に出ると、なんと真っ暗で夜中の2時だったのです。てっきり昼間の2時と思っていただけに、これは衝撃でした。それで、急いで夜中でも開いている店に行ったのですが、完全に昼夜が逆転していたのです。これは、生体リズムが乱れて時間の感覚がズレていたからでした。

 

●夜更かしでも生体リズムは乱れる

 

生体リズムはとても大事です。例えば、胃液も生体リズムに応じて分泌されています。研修医の頃、患者さんの胃のバリウム検査を担当したとき、時間がかかり過ぎてしまい、最後の患者さんの順番が来たときには昼近くになってしまったことがありました。そうすると、患者さんは朝食を摂らずに来ているので、昼頃になると空腹のために胃液が出てくるのです。胃液が出ると、バリウムが胃粘膜に付着しにくくなり、病変を検出しづらいなど検査精度が下がってしまいます。

 

このように、ほとんどの人は食事の時間になると、胃液が分泌されるようになるのです。これも生体リズムの一つです。幸いにも私は実験中も元気で体に異変は出ませんでしたが、もっと長く続けていたら、おそらく体調を崩していたと思います。

 

暗室生活をしなくても、夜更かしが続けば生体リズムは確実に乱れます。高齢者の方には寝つけないので深夜ラジオを朝まで聴いて、それから昼過ぎまで寝ているという方も多いでしょう。これでは生体リズムがズレていき、余計に眠れなくなります。私の実験では、だいたい1日1時間くらいずつズレていっていました。こういった乱れを防止するためには、夜遅くまで起きていても毎朝同じ時間に起きて太陽の光を浴びることが大切です。

 

光の入らない場所に長時間いると時間の感覚がなくなる!?
→ホント

 

習慣にしよう!

●夜遅くまで起きていても毎朝同じ時間に起きましょう。これによって体がリセットされるので、休みの日でも朝寝坊をしないで規則正しい生活を心がければ、寝つきも良くなって健康が維持できます。

 

 コラム  不眠や疲労感等の不調が現れる「時差ボケ」も、生体リズムが乱れた結果

 

海外旅行の際に、現地到着後や帰国後に、不眠や疲労感、食欲不振、イライラするなど、体に不調が現れることがあります。これが「時差ボケ」で、生体リズムが時差によって乱され、体調に変化をもたらした結果です。

 

通常、4~5時間以上の時差があると、時差ボケになるといわれています。日本から米国やハワイなど東方面へ向かうときは1日の周期が短くなり、逆にヨーロッパなど西方面へ向かうときは1日の周期が長くなります。生体リズムは、1日の周期が長くなるほうには順応しやすいのですが、短くなると順応しづらい傾向にあります。そのため、時差ボケがひどくなりやすいと考えられます。

 

 

永野 正史
練馬桜台クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本腎臓学会 専門医
日本透析学会 専門医・指導医

 

練馬桜台クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本腎臓学会 専門医
日本透析学会 専門医・指導医

1958年10月生まれ。1985年に佐賀医科大学卒業後、三井記念病院にて内科研修医、内科腎センター医員を経て、1992年に敬愛病院内科に勤務。1996年に敬愛病院副院長を務めた後、2003年に練馬桜台クリニックを開業(内科・透析・健診)。マラソンは趣味の域を超え、自己ベストは東京マラソン(2014年)にて3時間41分35秒を記録。

著者紹介

連載 110歳まで元気に生きる! 実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

110歳まで元気に生きる!実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

110歳まで元気に生きる!実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

永野 正史

幻冬舎メディアコンサルティング

その健康法は本当に正しい?巷でよく聞く健康法の“真偽"を61歳内科医が自らの体を張って検証! 血圧は運動後に上がらない!?肉の食べ過ぎは血糖値には関係しない!?…etc.「健康で長生き」が多くの人にとって関心の高い…

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