現代は、手軽な遺伝子検査で体質や病気の発症傾向を解析できる時代です。オタク気質の医師が受けてみると、意外な傾向が判明しました。第一線の医師による渾身のレポート! 本記事は『110歳まで元気に生きる! 実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント』(幻冬舎MC)から一部を引用し、内科医である永野正史氏の自ら体をはった検証と、医学的な根拠を解説します。

心電図で異常がなければ心臓は正常?

●安全に運動するためにも「冠動脈の状態」を知っておく

 

今は生活習慣を改善して健康になった人でも、以前にメタボだった経験のある人は、すでに冠動脈に硬化が起こっていてもおかしくありません。冠動脈は心臓を養う血管のため、ここに動脈硬化が起こっていると血管が狭くなって血流が悪くなり、狭心症や心筋梗塞のリスクが高まります。

 

ですから筆者も動脈硬化になっている可能性があり、マラソンの途中で倒れる危険があったのでビクビクしながら走っていたところがありました。一応、初レースに出場する前には「血管内皮機能検査」を受けており、結果が良かったので大丈夫とは思っていましたが、ラストスパートをかけたときには不安でした。

 

動脈硬化のある状態でマラソンをすると、水分を摂っていても脱水状態になるので血液はドロドロして血栓ができ、血管が詰まる危険があります。それがレース中の場合、ラストスパートをかけると心拍数が上がり、血液の排出量も増えるので血圧が上昇します。そうなると血管が破綻するため、それを修復するために集まってきた血小板によって血栓が作られた結果、急性心筋梗塞を起こすのです。

 

実際に、ハーフマラソンでは19~20㎞地点で倒れる人が多く、主催者も「ラストスパートをかけ過ぎないように」と注意を呼び掛け、大会によっては救急車を待機させているところもあります。このような場面を目にすると、余計に"明日は我が身"という心境で不安は倍増です。そこで、4年経ってようやく「冠動脈造影検査」を受けたのです。

 

あああ
冠動脈に動脈硬化が起こると、血管が狭くなって血流が悪くなり…


●冠動脈も3Dで検査できるようになった


心臓の検査というと、健康診断で用いられる心電図が一般的です。しかし、心臓に異常があるかどうかは血流が増したときに分かるので、安静にした状態で測る心電図では異常を見つけることは困難といわざるを得ません。ですから動脈硬化のリスク因子のある人は、冠動脈造影検査を受けておくと安心でしょう。

 

以前は、鼠径部から動脈に直接カテーテルを入れて心臓まで通し、冠動脈の状態を観察する方法が主流でした。これでは出血や感染症などの合併症を起こすことがありました。

 

しかし現在は、バーチャル大腸内視鏡検査で紹介したように、冠動脈の場合も造影剤を点滴しながらCT撮影を行い、そのデータを3D画像に組み立てる「3D‐CT検査」が登場しています。これなら患者さんの身体的負担も少なく、体を傷つけないので合併症のリスクもなくなります。

 

拡大像
[図表1]筆者の冠動脈CT検査の3D画像(拡大像

 

まさに最新の検査ですから、筆者も興味津々で専門病院を訪れました。筆者のクリニックでは対応できないので、患者として大病院を受診することにしたのです。こうして冠動脈の検査を受けた結果、異常なしというお墨付きをいただきました。それ以来、マラソンも安心して走れるようになったのです。

 

心電図で異常がなければ心臓は正常?

→ウソ

 

習慣にしよう!
ランナーだけではなく、一般の人でも歩くのが速い人、小走りをすると息切れをしたり胸が締めつけられるようになる人、生活習慣病の人、以前メタボだった人は、特に心疾患のリスクが高いです。一度冠動脈造影検査を受けてみましょう。

自分の内臓脂肪が一目でわかる検査がある?

●内臓脂肪は糖尿病を発症させる危険が…


脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪があり、女性には皮下脂肪が多く、男性には内臓脂肪が多い傾向があります。皮下脂肪は体の外からでも分かり、増えると腹部が出てきてつかめるので自覚することができます。これに対して内臓脂肪は、外からでは分からないうえ、増えるとお腹がパンパンに張るので筋肉と思い込んでいる人がいるように、なかなか自覚することはできません。

 

どちらが体に悪いかというと、圧倒的に内臓脂肪です。なぜなら、内臓脂肪はインスリン抵抗性を発生させるからです。インスリン抵抗性とは、インスリンに対する感受性が低下し、インスリンの作用を十分に発揮できない状態をいいます。つまり、血液中のブドウ糖を細胞が取り込めなくなるために、ブドウ糖が血液中に溢れてしまいます。これにより血糖値の高い状態が続き、糖尿病になるのです。

 

したがって、ダイエットをしてウエストが細くなったとしても、内臓脂肪が残っていると健康になったとはいえないのです。逆に、内臓脂肪が少なく、皮下脂肪が多いだけなら太っていてもあまり問題ありません。

 

例えば、力士は非常に太っていますが、普段から体を鍛えているので意外と内臓脂肪は少なく、ほとんどが皮下脂肪と筋肉なのです。ですから健康的な太り方ともいえます。

 

一般的には危険な太り方として、内臓脂肪だけが多い隠れ肥満と、皮下脂肪と内臓脂肪の両方が多くて見るからに肥満という二つのタイプがあります。最も厄介なのは、外見からは分からず、本人も気づいていない隠れ肥満です。


●腹部を輪切りにして内臓脂肪の付き具合を見る


そこで、どれくらい内臓脂肪が蓄積しているのかを測定できるのが「ファットスキャン」という検査です。これは、おへそのレベルで撮影したCT画像から脂肪組織の面積を測定する方法で、内臓脂肪の面積が100㎠以上になると内臓脂肪過多と判定されます。

 

筆者の場合は、減量をしてマラソンを続けているとはいえ、もともと体質的にも糖尿病になりやすいこともあり、内臓脂肪まで溜まっていたのではリスクを高めてしまいます。そこで、ファットスキャン検査を受けてみたところ、内臓脂肪は正常の範囲だったのです。

 

内臓脂肪面積は86.1㎠で、一応正常範囲内だが、若干まだぽっちゃりとしている
[図表2]ファットスキャンによる筆者の内臓脂肪の計測写真 内臓脂肪面積は86.1㎠で、一応正常範囲内だが、若干まだぽっちゃりとしている

 

しかし、まだ減らせる量の脂肪がついていたため、さらに体を引き締めなければいけないことを視覚的にも確認できました。画像を見ると、頑張って減量しているだけにショックでした。ファットスキャン検査は、早い時期に筆者のクリニックでも導入しています。内臓脂肪を推定するのに効果的で、しかも一目瞭然で分かりやすい検査にもかかわらず、希望者はあまりいないのが残念でなりません。

 

自分の内臓脂肪が一目でわかる検査がある?

→ホント

 

習慣にしよう!
内臓脂肪は糖尿病を引き起こすだけではなく、高血圧や脂質異常症など、さまざまな病気の要因になります。ですからメタボの人はもちろん、生活習慣病の疑いがある人は、食べ過ぎに注意するとともに、歩数計を持つなど日頃から意識して体を動かし、運動不足にならないような生活習慣をつけましょう。

 

永野 正史
練馬桜台クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本腎臓学会 専門医
日本透析学会 専門医・指導医

 

110歳まで元気に生きる!実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

110歳まで元気に生きる!実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント

永野 正史

幻冬舎メディアコンサルティング

その健康法は本当に正しい?巷でよく聞く健康法の“真偽"を61歳内科医が自らの体を張って検証! 血圧は運動後に上がらない!?肉の食べ過ぎは血糖値には関係しない!?…etc.「健康で長生き」が多くの人にとって関心の高い…

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