服用すれば病気のリスクは下がりますが、副作用として筋肉がつることがあり、日常生活に支障をきたします。デメリットを受け入れてでも薬を飲み続けなくてはならないのでしょうか? 第一線の医師による渾身のレポート! 本記事は『110歳まで元気に生きる! 実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント』(幻冬舎MC)から一部を引用し、内科医である永野正史氏の自ら体をはった検証と、医学的な根拠を解説します。

動脈硬化予防の目安はコレステロール値70?

●「薬+運動」を習慣化するとコレステロールはさらに下がる

 

脂質の一種であるコレステロールは何かと悪者扱いされがちですが、これ自体は細胞膜・各種ホルモン・胆汁酸を作る材料となり、体に必要な物質です。しかし、体内に増え過ぎると生活習慣病を招く恐れがあるので注意しなければなりません。

 

コレステロールは、HDLコレステロールとLDLコレステロールなどに分類されます。HDLコレステロールは、血管内の余分なコレステロールを肝臓に運び、動脈硬化を予防することで知られています。LDLコレステロールは、肝臓から血管や組織にコレステロールを運ぶ働きをしています。このLDLコレステロールが増え過ぎ、血管壁に沈着して酸化すると血管が狭くなったり、詰まって切れやすくなったりします。そのため、LDLコレステロールは悪玉コレステロール、HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれています。

 

筆者の場合は、メタボになる前から悪玉コレステロール値が高く、170㎎/dlを超えていました。この数値がずっと続いていたため、薬を服用するようになりました。これによって140くらいにまで下がりました。その後、ダイエットに成功すると、薬も服用して120~130に下がりましたが、これでもまだ高めです。

 

あああ
薬を飲みつつ、ケトン食やオメガ3などを摂りながらマラソンを始めたりすると…

 

そこで、実験オタクの本領を発揮し、ケトン食にしたり、オメガ3などを摂りながらマラソンを始めたりすると、80~100まで下がったのです。この数値を現在に至るまで維持し続けていますが、薬を飲まないと120くらいまで上がってしまいます。

 

この経験から、薬を服用しつつ痩せるだけでも数値は下がりますが、運動を加えるとさらに下がるので、両方を実践することが重要と感じています。

 

※9年間のグラフ
[図表2]LDLコレステロール値の推移※9年間のグラフ

 

●コレステロール値70というのは心筋梗塞の再発予防

 

コレステロール値を下げるためには、スタチン系の薬を服用するのが最も有効とされています。筆者も当初はこの薬を服用していました。ところが、前にも述べたように副作用で足がつったり、車の運転中に突然、肋間筋(ろっかんきん)がつって運転ができなくなったりしたのです。そこで別の薬に変えてからは、筋肉がつらなくなりました。

 

しかし、医者の間では"スタチン系ありき"の風潮があり、ほかの薬では目標の数値まで下がらないとされています。日本循環器学会によるガイドラインでは、心筋梗塞を起こした人が再発を予防するには70まで下げなければいけないとされています。これに対して米国では、発症したときの半分の数値にするとされています。つまり、200で発症した人は100まで下げるということです。それくらい下げなければ薬は効かないというわけです。

 

しかし、これらは心筋梗塞の再発予防であり、筆者のようにまだ発症していない人はどこまで下げればよいのか、という答えは出ていないのです。筆者は、自分の経験から動脈硬化の予防であれば100くらいが目安と考えています。また、スタチン系の薬でなくても、生活習慣を改善することでコントロールできます。

 

動脈硬化予防の目安はコレステロール値70?

→ウソ

 

習慣にしよう!
コレステロールの薬は服用を続けましょう。高コレステロール値が正常の範囲に落ち着くと、ほとんどの人が薬を飲まなくても良いと考えがちですが、薬を飲んだうえで生活習慣を改善することでコレステロール値も下がりやすくなります。

足の血圧は低いほうが良い?

●足の血圧は腕に比べて高いのが正常

 

筆者の専門は腎臓内科で、特に人工透析に力を注いでいます。透析患者さんは足の血管が細くなっている頻度が高いため、閉塞性動脈硬化症といって足の血管が詰まり、血流障害を起こしやすいのです。そのため、フットケアを行うことが重視されています。なぜなら、この病気は心血管疾患(心筋梗塞、狭心症など)や脳血管疾患(脳梗塞など)との合併が多く見られるからです。

 

そこで、筆者のクリニックでは脈波を測れる機器を導入し、患者さんの血管の状態を定期的に測定しています。また、この「脈波検査」は血管年齢も分かるので、一般の人も自分の血管の状態を知るのに役立ちます。

 

検査は仰向けに寝た状態で、左右の上腕と足首に血圧計のカフを巻き、心電図の電極と心音マイクを装着したら、あとは5分程度じっとしていれば測定は終了です。

 

これは、心臓から出た脈が動脈を波のように伝わっていくスピードを測定するもので、血管壁が硬くなるほど、また厚くなるほど脈波は速く伝わります。波は、硬い材質のものを伝わるときには速く、柔らかい材質のときにはゆっくりと進むので、脈のスピードを知ることで脈の伝わる場所、つまり「動脈の硬さ」を推測することができるのです。

 

これと同時に、「動脈の詰まり」(ABI)も測定できます。一般に腕の血圧に比べ、足の血圧は高い値を示します。ABIの数値が正常の範囲より低い場合は、足に向かう動脈の内径が狭くなっている疑いがあるので、安心できません。腕だけでなく、足の血圧を測ることも大事なのです。

 

足関節上腕血圧比(ABI)を計算し、正常では足首の血圧が少し高値となるが、この比率が0.9以下の場合には動脈硬化が疑われる
[図表1]脈波検査 足関節上腕血圧比(ABI)を計算し、正常では足首の血圧が少し高値となるが、この比率が0.9以下の場合には動脈硬化が疑われる

 

●血管年齢が20歳若いだけでは喜べない

 

脈波検査で「血管年齢」も算出されるので、筆者も定期的に受けていますが、結果は今のところ40代をキープしています。現在61歳ですから、血管は20歳ほど若いことになります。通常なら「すごい!」と喜ぶべきことですが、110歳まで生きるとなると、筆者の計算では50~60歳の血管年齢を80歳まで維持しなければなりません。そして、110歳のときに血管年齢が85歳くらいで寿命になるわけです。

 

したがって、50歳を過ぎた頃の血管年齢が、実年齢より低くないと長生きは難しくなります。通常は50歳から35年くらい生きて平均寿命の85歳を迎えますが、ここからさらに生きるには、50歳あたりから老化のスピードを半分にしなければなりません。ですから50歳くらいが、長生きできるかどうかの分かれ目になると筆者は考えています。

 

30代くらいで血圧や血糖値、コレステロール値が高い人は、動脈硬化の危険があり、血管年齢も高い可能性があります。きちんとコントロールしておかないと、さらに老化が加速することとなります。

 

足の血圧は低いほうが良い?

→ウソ

 

習慣にしよう!
50歳以降の人は自分の血管年齢を知り、リスク因子を取り除いて健康寿命を延ばす生活習慣を続けましょう。50代で血管年齢が高いと老化が進んでいるばかりか、動脈硬化の可能性もあり、寿命を縮めることになります。

 

 

永野 正史
練馬桜台クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本腎臓学会 専門医
日本透析学会 専門医・指導医

 

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    永野 正史

    幻冬舎メディアコンサルティング

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