ベトナムのNo.1不動産開発会社として知られるVinhomes。親会社Vin Group創業者の経営手腕は世界的にも高く評価されています。Vinhomesの優れた事業戦略について、代理店の立場で現場を見てきた筆者が紹介します。本記事では、現地で不動産ビジネスを展開する筆者が、加速度的に発展するベトナムの現況とともに、ベトナム不動産市場の見通しを解説します。

2018年5月、ホーチミン市証取引所に上場

ベトナムの不動産投資に興味がある方なら、一度は「Vinhomes」という企業名を聞いたことがあると思います。

 

筆者も過去にVinhomesの一次代理店として、ホーチミン市内の「Central Park」や「Golden River」などのコンドミニアムの販売を取り扱ってきました。当時からベトナム国内では異質の企業として注目していましたが、この企業の販売戦略や切り替えの巧みさには感心することが多々ありました。

 

本記事ではVinhomesを知らない方に向け、簡単に概要を説明しましょう。

 

VinhomesはVin Groupの住宅開発子会社として、2008年にBIDV-PP都市株式会社という名称でスタートしました。その後2度の社名変更を行い、紆余曲折を経て、2018年2月に分社したのち、正式に社名を「Vinhomes」として現在に至ります。2018年5月17日にホーチミン市証取引所に上場。終値では130憶米ドル(約1兆4,399億円)の値が付き、ホーチミン市証券取引所上場会社では、親会社であるVin Groupに次ぐ2番目の規模となりました。

 

世界が注目する、親会社Vin Groupトップの経営手腕

親会社のVin Groupについても、少しだけ概要に触れておきましょう。Vin Groupはベトナム最大の民間企業であり、コングロマリット(複合企業体)として事業展開を行っている会社です。事業内容は不動産、ホテル・リゾート開発、遊園地事業、小売業、病院事業、教育事業、自動車製造販売事業、スマホ製造販売事業、など多岐にわたる事業を展開しており、Vin Group傘下の子会社数は、2018年9月末時点で58社に上ります。

 

創業者のPham Nhat Vuong(ファム・ニャット・ブオン)会長は旧ソ連に留学後、ウクライナで1993年に即席麺の食品会社を起こし、2009年にこれを1億5,000万ドルでネスレに売却しています。同じく並行しながら2001年にVin Groupの前身となる不動産会社を設立して事業を拡大させ、一代でコングロマリットを形成しました。米経済誌フォーブスが公表したブオン氏の資産は2019年8月時点で82億5,000万米ドル(約8,990億円)と、世界で194位にランクされる資産家となっています。民間出身でありながらわずか20年弱でベトナム最大の企業を立ち上げた手腕は世界的な注目を集めています。

 

ここからは、筆者がVinhomesと関わるなかで知った、ほかの事業者とは一線を画す驚異的な事業戦略と切り替えの速さを紹介します。

納期の重視、戦略的販促活動、見切りのよさ

➀納期を重視した対応

 

ベトナムだけではありませんが、東南アジアにおける不動産開発では納期遅れが当たり前です。完成引渡予定から2、3年遅れる場合がザラにあるなか、Vinhomesは納期を重視する傾向があり、納期遅れの場合の延滞金も含め、その旨を契約書に記載しています。結果として納期遅れもそれによる延滞金の発生もありませんでした。

 

納期を重視するにあたり、恐らくベトナム初と思われる24時間体制での工事を行いました。筆者が販売に関わったホーチミン市のVinhomes Central Parkは、2015年頃から24時間体制での工事を行っています。労働者を保護する傾向が強いベトナムにおいて、24時間体制の建築現場での労働はまずありえないものです。筆者の記憶では、当時は3交代制で、サラリーもほかの建築現場と比べて倍近くであったことから、多くの労働者が集まったと聞いています。

 

➁販売代理店の強化

 

ベトナムでは直接デベロッパーが販売することは少なく、指定の販売代理店を使って販促を行います。筆者が販売代理店にいた当時、ベトナムにはホーチミン市では24社の一次代理店があり、そのなかで外資は3社と限られており、Vinhomesによる販売支援や𠮟咤激励、ノルマ的にも厳しい指導を受けました。Vinhomesはとくに在庫を嫌ったので、代理店は棟ごとの小分けの販売を行い、すべて売り切ってから次の棟を販売するなど、焦らされて販売促進していたことが思い出されます。

 

初期は購入者特典として高級外車やクルーザーの抽選会を開催するなど、さまざまなイベントを駆使して販促に当たりました。さらに、後半での売れ行きが悪くなって来ると1年~2年の賃貸保障サービスや、一括払いの割引などを適用しましたが、いま思えば非常に戦略的な販促でした。

 

➂先見性と切り替えの速さ

 

筆者がとくに驚いたのは、事業における切り替えの速さです。わかりやすい例では、1区中心地にある都市鉄道沿い(バソン駅直)Golden Riverのプロジェクトを部分売却したことがあげられます。その当時は、すでにGolden Riverのコンドミニアム5棟と別荘が売り出し中でしたが、バソン駅を含む周辺の開発を絡めながらの中心都市としての位置付けがあり、投資家からも非常に注目を集めたプロジェクトでした。ところが、売り出し中の物件を除いた残りのプロジェクトを、香港企業のAlpha King社にあっさりと売却したのです。

 

当初は中心地の物件であり、自社開発せずに手放したことを疑問に思った人が多くいました。しかし現在の状況を見ると、売却後の開発に色々な問題が生じたことから、売却が奏功したといえます。逆に、現時点ではAlpha King社はババをつかまされた格好です。筆者が見てきたなかでも、切り替えの速さによって大小問わず難を逃れているケースが多くあり、正直、この件は偶然なのか戦略なのかは判断しかねるところです。

 

最後になりますが、現在開発中のVinhomes Grand Park(旧VIN CITY)も、開発の半分程を外資(日系企業)やベトナム企業(ベトナムのデべロッパー)に販売しました。まるでGolden Riverのプロジェクトの再来を見ているような気がして、Alpha King社のようにババを掴まされる結果にならないといいが…と思っています。

 

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